人形家族.

□:骨格標本.
2ページ/3ページ

.
その日の夜、Xくんはベッドで妹さんと仲良く眠っていました。

子供特有の甘い香りと温かい体温に、Xくんが眠気を誘われた時でした。

「ん……?」

ポキ、ポキ

不意に、枝を折るような音が聞こえました。

何だろう、とXくんが辺りを見回すと音は妹さんから聞こえてきました。

(?寝ぼけて指でも鳴らしているのか?)

Xくんは、妹さんにかけてあった布団をめくりあげました。

「!!ひっ」

妹さんを見て、Xくんは息を飲みました。

妹さんの右腕は肉がはがれていて、骨がむき出しになっていました。

「あ、ああ」

ピキピキ、と妹さんの右腕は指先から徐々に骨になっていきました。

このままでは、全身が骨になってしまうかもしれません。

「う、うああああ!!」

Xくんは、弾けるようにベッドからおりて走り出しました。

Xくんが向かった先は、物置でした。

(アイツは、僕が守らなきゃいけないんだ)

たとえどんなに、恨まれたとしても。

物置からある物を持ち出して、Xくんは部屋に戻りました。

「つっ!!」
「にい、にいちゃ」

部屋に取り残された妹さんは、運が悪いことに目が覚めていました。

ポロポロと涙を流していたことから、妹さんは状況を理解していることがわかりました。

「にいちゃ、あたしがガイコツこわしたから、あたしもガイコツになっちゃうの?」
「ならないよ」

そんなことは、決してさせない。

Xくんは、倉庫から持ってきたそれを妹さんに見せました。

土で刃が汚れた、大きな大きなナタでした。

「な、た?にいちゃ、あたしを殺すの?」
「違う、お前には生きていて欲しいんだ」

Xくんはベッドに近づくと、妹さんの肩にナタの刃をそえました。

妹さんは、Xくんの意図を理解しました。

「いや、にいちゃ」
「ごめん」

カタカタと、Xくんの手は震えていました。

「お前が骨になって死ぬくらいなら、腕をなくしたまま生きて欲しい」
「いや、やめて、やめてにいちゃ」

えぐえぐと駄々をこねる妹さんに、Xくんは胸がしめつけられました。

しかし、妹さんの腕はすでに肘から下が骨になっていました。

迷っている時間は、残されていませんでした。

「ごめん」
「!!」

Xくんは、ナタを両手で掴むと振り上げました。

目を大きく開いて、妹さんはただボロボロと涙を流していました。

「にいちゃ、」
「ごめん」

Xくんは、何度も謝りながらナタを妹さんの腕に振り落としました……。


.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ