人形家族.
□:土人形.
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次の日、部屋にはお腹がへこんだお姉さんとQくんが発見されました。
お姉さんは、出血多量によるショックのせいか赤ちゃんを失った絶望のせいか今でも目を覚まさないそうです。
「恐らく、Qくんの言う通り土人形が子供を葬ったんだろうな」
「………」
クモリ姉ちゃんは貧乏ゆすりをして言った。
イライラしている理由は解らないが、今は怒らせない方が身のためだ。
「母神像とはいえ命を勝手に奪ってはいけないとは思わないか?例え姉と弟の子供でもだっ!!」
「そう、だね」
クモリ姉ちゃんは頭をかきむしっていて、ストレートの髪の毛が台無しになりそうだった。
「おいハレ!!お前はどうして近親間の子供が産まれてはいけないか知っているか!!」
「え、」
答えても答えなくても、きっとクモリ姉ちゃんは怒るだろう。
どちらでも結果は変わらないので、僕は答えることにした。
「生物の先生は、悪い遺伝子を残さないためとか世間では反社会的行動になるとか道徳的に間違っているとか言ってたよ」
「間違っているのは世界の方じゃないか!!」
ガン、とクモリ姉ちゃんは強く握りしめた拳をテーブルに落とした。
「遺伝子の問題が生じるからといって命を宿すことを誤りだと言う世界が間違っているんだ!!なあハレ!!私は間違っているのか!!答えろ!!」
「つっ!!」
鬼のような形相で、クモリ姉ちゃんは僕の胸ぐらを掴んだ。
今の僕には、クモリ姉ちゃんを否定することは出来なかった。
かといって、肯定することも出来なかった。
「クモリ姉ちゃん、その問題は間違っているって言う人も間違っていないって言う人もいるよ」
「他の人間なんてどうでもいい!!私はお前の意見を聞いているんだ!!」
「………」
クモリ姉ちゃんは、完全に頭に血が上っていた。
はあ、と心の中でため息をついて僕は言った。
「ねえ、クモリ姉ちゃんは僕に何て言って欲しいの?」
「は、」
我に返ったのか、クモリ姉ちゃんの瞳に正気の色が戻ってきた。
「こういう問題は答えなんて出ない、だからクモリ姉ちゃんが言って欲しい答えを言ってあげる」
「………」
パッ、とクモリ姉ちゃんは手を離した。
クモリ姉ちゃんが引っ張り過ぎたせいで、服がクシャクシャになった。
「すまない、ハレ」
「別にいいよ」
シワになった服を伸ばしていると、クモリ姉ちゃんがうなだれた。
僕に八つ当たりをしてしまったことを、反省しているようだ。
(こういう所は、素直な人だよな)
どちらが年上なんだか。
仕方がないので、僕は波形にうねったクモリ姉ちゃんの髪をそっと直してあげた……。
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