Main3

制服人形
1ページ/61ページ





もう誰にも渡さない、自分だけの―――
制服人形



毛利元就は、隣の席に座る長曾我部元親のことが大嫌いだった。
素行が悪く授業中寝るのは当たり前、昼休みには音楽堂の近くにある駐輪場で子分達と煙草を吸いながらしょうもない話しで盛り上がり、放課後の喧嘩は当たり前。
それなのに何故か女子からは人気があり、彼を嫌っているのは元就くらいしか居ない。
昼休みが終わってもなかなか戻って来ない元親を教室に連れ戻すため、彼が居るであろう駐輪場に向かうと、案の定独りで煙草を吸っていた。

「長曾我部!未成年の喫煙は法律で禁じられておると何度言えば…」
「うっせぇな…俺に構うなって言ったろ」

短くなった吸い殻を地面に放ると、元親は面倒臭そうに頭を掻きながら立ち去ろうとする。

「…それは無理だ」
「はぁ?」
「生徒会の一員として、学園の風紀を乱す貴様を見逃すなど、我には出来ぬ」

何処までも真面目な元就に苦笑すると、彼女に背を向け歩き出した。
風に靡く細い髪に真っ白な肌、黙って居れば学園で一番綺麗なのだが、その真面目で根暗な性格が災いし、残念ながら友達も彼氏も居ない。

「俺はあーゆー女、好きなんだけどな…」

元親が呟いた言葉は風に掻き消され、彼女の耳には届かなかった。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ