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FINAL BLUE
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念願だった私立の男子校に合格し、親元を離れ、マンションで一人暮らしを始めた毛利元就は、数日前から届く差出人不明の郵便物に悩まされていた。
引っ越したばかりで頼れる人も居らず、近所の交番に居る警官に相談したが『男なんだしこの程度のことで来られても』と冷たくあしらわれてしまった。
元就宛ての手紙には服装についてや帰り際に寄ったスーパーで何を購入したかまで丁寧に書き記されてあり、送り主はいつも自分の直ぐ傍に居る筈なのに、それが誰なのか全く判らない。
そして今日もまた、郵便受けの中に手紙が入れられていた。
直ぐに捨てれば良いのだが、どんなことが書かれているのか気になり、マンションのエントランスホールで乱暴に封を開けると丁寧に四つ折りされた便箋を開く。
『今日は、背の高い柄の悪そうな男と一緒に歩いてたね。彼とはどういう関係?恋人?だったら不釣り合いだ、今すぐ別れた方が良い。』
機械的な文字が並ぶ水色のそれをくしゃくしゃに丸めると、元就はエレベーターの脇に置かれたゴミ箱に放った。
手紙にあった背の高い柄の悪そうな男とは、元就と同じクラスで入学当初から素行が悪く、担任を困らせている長曾我部元親のことだ。
授業中の大半を寝て過ごし、注意されると直ぐに教室を出て、屋上か駐輪場で煙草を吸っているような彼と、成績優秀で真面目な自分が親しくなるなんて、元就自身思ってもみなかった。
確かに喫煙や授業をサボる元親の行為は許せるものではないが、話していると凄く楽しくて、もっと一緒に居たいとさえ思ってしまう。
今日も授業を終え、さっさと教室を出ようとした元親を彼の方から途中まで一緒に帰らないかと呼び止めたのだ。
彼なら自分を守ってくれるかも知れない、そう思った元就はゴミ箱から丸めた便箋を拾うと、エレベーターのボタンを押した。



FINAL BLUE
恋愛は一種の破壊行為だと誰かが嗤った…



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