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触れる指先から伝えた想い
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学校の近所にあるスーパーで適当にお菓子や飲み物を買うと、袋を下げ、元親の家に向かう。
毎日のように一緒に帰っていた政宗には『進路のことで担任に相談がある』と嘘を吐いたのだが、彼は信じて居ないようで。
切なそうな表情に心が揺らぐが、彼も何か隠しているのは確かで、自分だけ罪悪感を感じるのはおかしいと言い聞かせ、教室を出て来た。
家の前まで来た元就は大きく息を吸い込むと、震える指先でチャイムを鳴らす。
が、誰も出て来る気配がない。
もう一度押すと、備え付けのスピーカーから元親の声が聞こえてくる。

『誰だ?』
「我だ。早ようドアを開けよ」
『…我って…あのなぁ、』
「開ける気がないなら、帰るぞ」

中からバタバタと足音が聞こえたと思ったら、勢い良くドアが開き、元就の額に激突する。
足元にうずくまり、頭を押さえる彼に笑いを堪えながら謝ると、思い切り睨まれた。

「我に怪我を負わす気か、長曾我部っ!何故きちんと確認しない!!」
「しょうがねぇだろ!アンタが急かすから…」
「我の所為にするとは、随分と良い度胸をしておる。貴様に土産を持って来てやったが、渡す気が失せたわ」
「だからすまねぇって謝ってんだろ!…って元就?」

急に大人しくなった彼が心配になり、しゃがんで顔を覗き込めば、眉間に皺を寄せ、苦しそうに呻いている。

「大丈夫か?おい!」
「………何処かで聞き覚えのある…っ、だが、其処から先が思い出せぬ…」

本当は直ぐにでも思い出して欲しいが、苦痛に堪える彼を急かす訳にもいかず、元親は穏やかな笑みを浮かべると、優しくその身体を抱き締めた。
顔を合わせる度に些細なことで喧嘩して、でも元親が謝れば唇を尖らせながらも、直ぐに許してくれた。
あの頃みたいに会話は出来るのに、心だけが一方通行のまま。

「取り敢えず、中に入って休め」
「………うむ」

差し出した手に触れる元就の温もり。
元親はその手をしっかり握り締めると、彼の身体を支えるようにして中へ入った。



触れる指先から伝えた想い
(キミの心に届いただろうか…?)



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