Main2

聖夜の愛悼
1ページ/3ページ




緑と赤に彩られた街並み。
クリスマスシーズンになると毎年、毛利元就は自分の身に突如降りかかった不幸な出来事を思い出す。
忘れもしない10年前のクリスマス―――当時10歳だった元就はリビングで夕飯の支度が終わるのを静かに本を読みながら待っていた。
キッチンから漂って来る良い香り。
今年は一体何が貰えるのだろうと表面上は冷静さを保ちながらも、内心はわくわくしていたのだが、サンタクロースが彼に齎したのは"惨殺"という名のプレゼントだった。
いつもより早めに仕事を終わらせ、帰宅した父親が玄関のドアを閉めようとしたその時、サンタの格好をした男が突然押し入り、持っていたナイフで彼を刺した。
悲鳴を聞き、駆け付けた母親も同様に刺殺すると、男は口元に笑みを浮かべ、去って行った。
静まり返った室内。
恐怖に身を震わせながら玄関に向かった元就が目にしたのは、真っ赤になった両親の姿。

「…っ…うぁぁぁぁっ!!」

どんなに名前を呼んでも、もう二度と戻って来ない。
両親を失い、絶望の淵に立たされた元就に手を差し伸べたのは、隣に住む"好青年"で有名な彼より6歳上の長曾我部元親という青年だった。
異変に気付いた彼がドアを開けると、血の海に佇み、泣きじゃくる元就とその足元に転がる彼の両親の姿があった。

「…ちょ…そかべ…っ、」
「大丈夫だ、大丈夫…俺がアンタを守ってやる…」

彼はそう言って元就の身体を強く抱き締めた。
生きていると判れば必ず犯人は自分を狙うだろう、そう思っていた元就は、彼の申し出もあり元親の家で暮らすことにした。
元親の両親は共働きで、父親は出張で海外に居ることが多く、滅多にこの家には帰って来ない。
母親はそんな彼に愛想を尽かし、他の男の家に入り浸っていて実質こんな広い家には彼一人しか住んで居ない状態だ。
元就の服を脱がせ、シャワーで血の付いた手足を綺麗に洗ってやると、元親自身も汚れた身体を洗う。

「…長曾我部、貴様が居てくれて良かった…」

自分に縋り付いてきた元就を抱き寄せ、その額に口付けると、口角をつりあげた。



.
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ