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嫌い、嫌い、愛してる
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―嫌い、嫌い、愛してる



運命なんて何処に転がっているか判らない。
例えば、嫌いで嫌いで早く消えろと願っていた相手に対して、恋心を抱いたり…。


毛利元就は朝からかなり苛々していた。
原因は、同じクラスの長曾我部元親…彼は極めて変態な上にポジティブなストーカー。
なのに外見が迂闊に良いせいで、女子からは王子様なんて呼ばれ、ファンクラブまで作られている。
おまけに腐女子と呼ばれるクラスメート達が元就に付き纏う彼を見て、『頑張って!!』とか『絶対落としてね』などと応援するせいで、行動が徐々にエスカレートしてきた。
そして今もストーカー元親が、隣で熱い視線を送り続けている。

「貴様は一番前の席であろう。戻れ」
「ああ、席交換してくれるって!今日から隣で正々堂々アンタの観察が出来るぜ!」

元親に気付かれないよう舌打ちすると、彼の視線を遮るように机に横たわった。
学校の授業なんて聞くだけ無駄、そう思いながらふと隣を見ると、王子様こと変態まで机に寝そべっている。
彼と授業から逃れるべく、元就は席を立つと気分が悪いと嘘を吐き、保健室に向かった。
今日は運の良いことに、元親と同じかそれ以上に変態な明智先生が出張で留守だ。
元就は窓側のベッドに横たわると、早速目を閉じた。

「毛利っ!」
「!!」

無視して寝た振りを続けていると、元親は隣のベッドに腰掛け、遠慮なく話しを続ける。

「無視するなって、毛利。本当は起きてんだろ?つれねぇなぁー…でも、そんな毛利がすげぇ好きなんだけどよ。そもそも王子様って呼ばれるほどイケメンなこの俺に落ちねぇのは、アンタだけだぜ?」

背筋がぞくぞくする。
彼のそういう自信過剰でうざいところが大嫌いだと何度も言っているのだが、なかなか理解してくれない。
いや、そもそも理解する気もない。

「毛利はどんな奴がタイプなんだ?草食系とか肉食系ってあるけど、どっち派?なぁ、せめてこれくらい答えろよ」

余りにもしつこい元親に、元就の怒りは頂点に達してしまった。

「我は貴様のような奴が一番嫌いだ。貴様の顔も見たくないし、会話をする気もない。失せよ」

元親からの反応はない。
黙ってベッドから降りると、足を引き摺るようにして保健室を出て行った。



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