護り石の赤鉄鉱(テニス以外)

□『うちのシロ知りませんか?』
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バイトが終わってから着替えずに出てきた為、書生姿のままであったが、そんな事気にしてはいられない。
下駄履きの為何度も足をもつれさせながらも、橋の下にたどり着いた。
「そこまでだ!不届き者め!!」
せっかくだから少しそれっぽく言ってやろう。そんな事を考えながら時代がかった言い回しで一喝する。
「やべぇ、見つかった!!」
「あぁ?なんやお前は!!」
城崎を犯していた男達が、慌てて股間のブツをしまう。
「う、さ…くん…」
時折咳き込みながら、かすれた声で苦しげに呼ぶ城崎。
全身に痣や煙草を押し付けられたような痕があり、手首はバンダナで縛られ、秘部にはスプレー缶を挿入されていた。
SMと違って愛の伴わない、一方的な暴力。
そのあまりにも痛々しい姿に、宇佐の怒りが爆発した。
「成敗っ!!」
殴りかかろうとした時…
「宇佐くん…。」
城崎の声に気付き、宇佐が手を止める。
「駄目だよ…。暴力は…住子さんに…、迷惑が……
俺は…平気…だから……。」
普段飄々としている彼から出る、悲痛な声。
いつの間にか、暴行犯達の姿は消えていた。


「助けてくれなんて、言った覚えは無いけど…?」
いつもの調子で意地悪く尋ねる城崎。
「嘘つけ。…じゃああんた何でそんな泣きそうな顔してんですか…。」
城崎の色素の薄い髪の間から見える貴石の瞳は、かすかに潤みを帯びていた。
「たまに居るんだ。相手をただ一方的に傷付けて喜んでる自称Sの奴。笑っちゃうよね…」
でも、何となく宇佐くんが来てくれるような気がした……そう呟いた城崎に、宇佐が驚いたように反応する。
「…仮にも同居人なんだし、見捨てて帰ったらそれこそ住子さんが悲しむでしょ。」
だから勘違いすんな、と言わんばかりに宇佐はスプレー缶を抜き取り、その辺にぽいと投げた。
「消毒だけ部屋でしてあげますんで、明日ちゃんと病院行ってくださいよ」
よいせ、と歩くのも辛そうな城崎に肩を貸しながら家路を急ぐ宇佐は、安心するやらやるせないやらで複雑な心境だった。
(にしても、やたら出ていくと思ったら男漁りだったのかよ。なんか面白くねぇ…)
後日、城崎の傷がだいぶ癒えてきた頃を見計らって宇佐が『お仕置き』をかましたのはまた別のお話である。


〈END〉

河合荘大好きだー!!
昨年嵌まった沼ですがめっちゃ面白いですよ
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