黄水晶の書棚(その他二次創作・一次創作)

□不思議系お姉さんがギャルの幽霊に懐かれる話A
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ギャルの幽霊に懐かれたので、ご飯を食べさせる事になってしまった。



夕暮れ時とあって、店内はなかなかに混んでいた。
密を避けて早めに済ますか。まずは基本の材料からカゴに入れていく。
「人参、玉ねぎ、じゃが芋…は男爵の方がいいって言うけど、私はメークイン派。」
お肉は…普段は安い豚コマだけど、今日は牛コマにしてやるか。
そして………危なく忘れる所だった。『アレ』も。
次に、調味料売り場でルー探し。
実はカレールーは、差別化を図るためにメーカーによって辛さが微妙に違う。
例えばA社の中辛程度の辛さでも、B社の辛口に相当するといった具合に。
(うちのは若干辛めのやつだけど、まぁ辛味が強かったら、アレで調整しよ…)
いつも使っているルーを手に取り、カゴに入れた。

乳製品売り場でピザ用のシュレッドチーズを買うと、幽霊が姿を現した。
「お姉さん、これ何?」
彼女が指差す先には…
「あぁ、タピオカだね。飲みたい?」
「たぴおか…って何?」
首を傾げる幽霊。あっそうか、この子の時間は生前で止まってるから、知ってるはずないか…
ちなみにここはスーパーの中なので、周りのお客さんに聞こえないよう超小声で対応する。幽霊もそれを察してくれた。
今や知らない女子高生などいないその糖質の銃弾を、知らない子がいるって……なんか新鮮で、いいな。
「んーと…本当はキャッサバっていう芋から作られるお餅みたいな奴なんだけど、スーパーに売ってる奴はゼリータイプだから、本物じゃないの。それでもいい?」
実はキャッサバの澱粉質で作られる『本物』は時間が経つと固くなる(お雑煮に入っている餅をイメージして頂くと分かりやすい)ため、スーパーやコンビニで買えるタピオカドリンクはゼラチンや寒天を加えてイカ墨で着色した『模造品』なのだ。もっともそれが悪いとかではなく、本物よりも低カロリーで噛み切りやすいと支持されてはいるが。
しかし、彼女の答えは意外なものだった。
「本物とか本物じゃないとか、飲んだ事ないからわっかんねぇし!その人がおいしいって感じたら、その人にとってはそれが本物でよくね?」
そう一刀両断する、ギャルの幽霊。
「あんた、なかなか深い事を言うね…」
確かにその通りかもしれない。
考えてみたら刀剣の『写し』や人工宝石だって本物(本歌)からしたら『偽物』だが、世の中にはそれを愛し価値を見出す人達だっている。
時には、それが本物以上の価値を持つ事さえも……
「分かった。どれにする?」
「ミルクティー!」
「んじゃ私はカフェオレ」
「そっちも旨そう」
「一口あげるよ。夕飯の後からね」
「やったぁ」




帰宅した後、手洗いうがいをしてすぐさま調理にかかった。
幽霊も勿論一緒だ。隣に立って私が作るのを楽しそうに見ている。
「あんたは座ってな」
「やだ」
「ならどうぞご勝手に」
「はーい、勝手にしまーす」
家で料理しながらそんな軽口を叩くのも、何年ぶりだろうか……
「お姉さん、手際いいね」
カレーの下処理を早々に終えて煮込む私に、幽霊が感心する。
「一人暮らしだと嫌でもこうなるよ。やらざるを得ないってやつ」
「変なの。褒めたんだから素直に喜べばいいのに」
「何とでも言え」
気にしない振りをして副菜の調理に取りかかった。
そう、変人扱いなど今更慣れている……
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