黄水晶の書棚(その他二次創作・一次創作)

□不思議系お姉さんがギャルの幽霊に懐かれる話
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彼女はいつも、そのバス停にいた。
最初は『制服も違うし、どこの高校の子だろう…』としか思わなかった。
同じバス停を使うといっても別に会話したりするわけでもなく、本当にただ同じ場所に『立ってる』だけ。
そのうちバスが到着して私と友人が乗り込んでも、彼女はそこにずっと立っていた。
(乗らないのかな…?それとも路線が違うとか…)

1年後も

2年後も

3年後も


私が社会人になって、車で移動するようになっても……

彼女は、ずっとそのバス停に立っていた。
あの時と、何一つ変わらない姿で………





「お姉さん、うちが見えてるっしょ?」
スーパーの駐車場に車を停めて降りると、背後から声をかけられた。
驚いて振り向くと、なんと『彼女』が立っている。
「あ…あなたさっきの…」
『バス停に』と言いかけた所で、「ほらやっぱり見えてるし」と悪戯っぽく微笑む『彼女』。
「ここまでどうやって来たの?バス?」
あのバス停からスーパーへ行くには、山一つ分越えなければならない。徒歩の女子高生に歩けるような距離ではないはずだ。
「ううん、バスは乗れないよ。だってうち幽霊だもん」
「お、おぅ…」
なるほど…人ならざるもの(元人間だが)ならば、不思議じゃない…何故か納得している自分がいた。
「だから、お姉さんの霊力辿って、ついて来ちゃった!それまでだーれも気付いてくれなかったんだもん。」
あっけらかんと言い放つ幽霊ギャル。
「え…何?霊力って霊感みたいな奴の事?私にはそんなもの…」
「あるよ。お姉さん自分が気付いてないだけでさ。うちには分かる」
幽霊ギャルの瞳が、急に真剣なものになった。
確かに、姉は所謂『見える人』だったし、幼い頃から祖母に『目に見えない世界を大切にしな』と教えられてきた。
自分には無いと思ってたのに……

「それよりさ、お腹すかね?」
「は?」
また突然何を言い出すんだこの幽霊は…
「久しぶりに霊力使ってお腹減った。お姉さん、なんか食わせて?」
後から考えてみれば随分と図々しいお願いだが、私も不思議と嫌な気はしなかった。
幽霊ってどうやって食事するんだ?と一瞬頭をよぎったが、今日は疲れてるし面倒な事は明日考えればいいか。
「………よし!あんた、アレルギーある?」
「なんもないよ。ってかあっても死んでるから症状出ねぇし」
「とりあえず、カレーにするか。カレーに何かこだわりある?」
「中辛、チーズトッピング」
「了解」
何だか久しぶりに、料理する気力が湧いてきた。幽霊ギャルとはなかなか面白い。
せいぜい胃袋掴んでやるから覚悟しろ!と心の中で小さく意気込みながら、スーパーの出入口をくぐった………



【完】
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