激情に燃える紅玉(庭球CP有り)

□『楽しまなきゃ申し訳ない』
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文化祭。それは学年の枠を超えて、唯一学校で食べて歌って踊って騒げる、素晴らしい日…。
にも関わらず、俺は浮き足立つ皆から少し離れて、階上へ昇った。向かった先は……

「オサムちゃーん……」
模擬店があるのは2階までなので、化学教官室のある辺りはさすがに静かだった。
愛しい先生が机に座って、黙々とレポートを纏めていた。
「オサムちゃん。」
話しかけると彼は肩を一瞬震わせたが、すぐにこっちに気付いて微笑んだ。
「白石か。脅かすなやー」
「行事の日に仕事やなんて…校長にバレたら大変やで。」
うちの学校行事は原則として、『全員参加』と『無礼講』だ。
「せやかて、このレポートだけは今日中に終わらせたかったん。」
パソコンの画面を指すオサムちゃんの手を見ると、心なしか前より細くなっていた。
ついにいたたまれなくなって、先生を折れそうなくらい抱き締めた。
「こんなに痩せて…!オサムちゃん、ちゃんと飯食ったんか?」

突然のことにオサムちゃんは目を真ん丸にしたが、すぐにいつもの調子に戻った。
「ああ、大丈夫やで。ちゃんと下で買うてきた。」
ほら。と言ってオサムちゃんが示した机には、保温容器に入った豚汁とラップに包まれた2つのおにぎりが置かれていて、俺は安堵した。

おにぎりを一つ分けてもらったので、二人で食べながら会話を少しばかりする。
「もう3時か…白石、お笑いライブ行かんのか?」
「オサムちゃん…せっかく誘いに来たのに追い返すっちゅーんか?」
「おおきにな。気持ちは嬉しいけど、仕事あんねん。」
どうしても仕事を優先したがるオサムちゃんが癪で、少し脅かしてみることにした。

「オサムちゃん…一緒に来へんとオサムちゃんに首輪つけて、あげく姫抱っこして無理矢理連れてくで?」
「ううっ………」
ふふふ。この調子やとあと少しで陥落や…

「オサムちゃんが誰のモノなのか、全校に見せつけなあかんくなるなぁ……。」
「い、行きます…。」

「よろしい。」

お笑いライブは3時半からや。
「ええ席取れんくなる前に、急ぐで!」
「はいはい。」

引退して逢えんかった分、そこら中をひきずりまわしてやろう。
覚悟しとってや、先生♪


《END》
 

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