激情に燃える紅玉(庭球CP有り)
□甘党さんの性格は甘くない
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日曜日の学校に、シャープペンの音が一定の高さで響く。
そう、今日は実力判定模試の日。
証明問題を一つ終え、ふと息をついて窓を見やる。
ターコイズの板を嵌め込んだような平面の空に、できたばかりの積乱雲が浮かんでいた。
どこに隠れていたのか、蝉しぐれが大音声で響き渡る。
奴等は七日の間に配偶者を見つけて子孫を遺さなければならない。考えてみるとすごい話やな。
「………?」
門の方に人影。
遠目で陽炎のようにしか見えないが…
(まさか………)
頭の方できらめくのは、嫌になるほど見慣れた金髪。
結局その後3教科をこなして、終わるや否や、鞄を引っ掴んで門に走った。
「なんや光、彼女でも来とるん?」
「うるさいわ!」
数人の同級生にからかわれたが、知った事ではなかった。
「おー光。終わったか!」
「謙也さん!なんで模試が今日って……」
「俺は三年間全部出たんやで。日程はおおよそ分かる」
せやったら終わりそうな時間に来ればええのに、この人はどこまでアホなんや…。
「アンタの場合は補修に限り無く近い模試でしょ。」
「うるさいな!最終的に高校入れたんやからええやろ!」
金髪を閃かせてぎゃんぎゃん喚く先輩。
全く…少しも変わってへんわ。安心した。
笑っていたら、急に手を引っ張られた。
「ほら、行くで!」
「は?ちょっと、どこへ!」
「『満月堂』!例の一番高い奴、お前食いたがってたやろ?俺が奢ったるわ。」
「例の一番高い奴」というのは、金魚鉢ほどの器に白玉・小豆・アイスをちりばめ、フルーツとホイップで天辺を飾った『女王の善哉』の事だ。
お値段的にも中高生に手が出る物ではない。
「昨日バイト代入ったんや。真っ先にお前の誕生日祝ったろ思て、使わずに持って来た。」
嘘…
覚えててくれたんか………?
家族に聞いても、はぐらかすだけで答えてくれなかった。
なのに、この人は…。
「あ………」
ありがとうございます、めっちゃ嬉しい。それだけの事なのに、言葉が詰まってなかなか出てこなかった。
普段から物静かな性格を装ってたのが、今更悔やまれる。
「ええで。向こうついたら話そ。」
謙也さんは気持ちを汲んでか、優しく笑ってくれた。
〜♪
いきなりのメール。
「誰やし………」
少し苛立って確認したら、義姉からだった。
『光へ
夜からお祝いするから、早めに帰るんよ
姉ちゃんより』
「姉貴……」
心に温泉が沸いたような気がした。
目から溢れたモノを先輩に見つからないうちに思いっきり袖でこすると、先輩に満面の笑み(謙也さん曰く、この上なくクソ生意気な笑顔)を向けた。
「善哉の後は洋菓子も食いたいっすわぁ」
「お前という奴は…」
義務教育最後の誕生日。
盛大に祝わせてやりますよ。
《END》
財前くんハピバ!!
※店名などはもちろん架空です。
ありがとうございました!