激情に燃える紅玉(庭球CP有り)

□玉の緒
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玉の緒よ
絶えねば絶えね
永らえば
忍ぶることの
弱りもぞする――
(式子内親王)



図書室専用のトイレから大理石の壁を隔てると、ちょっとした空間がある。
一応は談話室らしいが、放課後ともなると人気は皆無に等しく、訪れる者の目的は限られていた。
そう、例えば。


「白石…もうやめや…俺は教師やぞ……」
「『もっとちょうだい』の間違いやろ?前をもうこんなにして。」
白石が嘲るように笑って、俺の肌を触る手に力を込める。
首筋を舐めていた舌を引っ込めて、突然歯を立ててきた。
「って………!」
されるが侭ではいけないと思い白石を睨みつけると、「そーんな顔せんの。」と視界を帽子の縁で遮断された。

ふいに白石の手が下に移動して、何かを探り出した。
背中を冷たい汗が伝う。
ベルトのバックルを外された事に気付くと、思わず白石を突き飛ばした。
「もう…やめろ…!!」

部活で鍛えられている為か、白石はふらつきもせずに着地したが、表情は驚きで僅かに蒼白だった。
「オサムちゃん…?」
「お前の為を思って言うとるのが、なんで分からんのや!」
…お前には、愛される権利があるから…
異性に夢を抱けないまま、大人になって欲しくない…
俺から『普通の恋愛』を奪ったアイツみたいな教師になりたくない…


「何怒ってんねん。意味分からんし。」
俺の気持ちなど知ってか知らずか、白石はブツブツと呟きながら自分の戦闘態勢になっている物を静めに個室へ入っていった。
あとに残されて、長四角に切り取られた窓から、見るともなしに空を見た。鉛色の意地悪そうな雲が夕焼け空を走っていた。

閉館までまだ時間がある。
帰りに何か借りて行こう。できれば悲しい話がいい。
一晩中泣きながら過ごすというのも、たまにはいいかもしれない…。



私の命よ
終わるなら終わってしまえ
この想いを抑える力が
衰えてしまう前に――


《END》
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