水晶の群生地(庭球CP無し)

□千歳ハピバ!
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奇跡的に雑務が年内に終わり、仮にも社会人なので申し訳程度に年賀状も書き、部屋の大掃除も午前中に終わった。(間取りが窮屈だと、こういう時だけ楽や。)

さすがに年末は家族と過ごしたいだろうと思い、恋人でもある白石は誘わなかった。(ちなみに彼は家族で旅行するらしい。出かける前日に「お土産買って来たるから。」と言ってキスしてくれた。)
去年までは大晦日ともなれば、テニス部のレギュラー共が俺の部屋に集まり楽しい時間をくれたが、今はもうそうはいかない。
時折財前が来て俺の手作り和菓子を呼ばれてく以外は、基本的に一人だった。

年越し蕎麦が毎年インスタントというのも悲しいので、早めにスーパーで買い物をした。久しぶりに手作りしてみる事にする。


海老の殻を剥いて背わたを取っていると、ふと思い出した。
「そういや、今日誕生日やった奴がおったなぁ…」

長身ゆえに存在感はあるが、言動はふわふわしとってまるで妖精のような感覚さえあったアイツ。

(また、会えたらええな…)

思った後で、自嘲するように鼻を鳴らす。
在学中でさえ掴まりにくかった奴だ。卒業した今となっては、もはや消息さえ分からない。
「まぁ、どこであれ元気に生きとってくれたら、そんでええ。」


ほどよいキツネ色に揚がった海老天を見て、首をかしげた。何故か無意識のうちに2尾も揚げていたのだ。
「これは厄介やな…。」
蕎麦なら余っても冷凍保存が効くが、揚げ物となると話が別だ。
まさか、アイツの事を考えている時に無意識に彼の分も作ってしまったというのか…

「たわけやなぁ…」
もうアイツは来ないというのに、未練がましいもいいとこだ。



いきなり呼び鈴が鳴り、ドアが開かれた。
「ちょっと、開けるんやったら一言言ってか……ら?」
無礼な来客に鬱陶しげに口を開いたのも束の間、口がしばし閉じられなくなった。
何故ならそこには…………

「久しぶりたいね。オサムちゃん」

「…………!?」
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