水晶の群生地(庭球CP無し)

□妖精の祭り
1ページ/1ページ

遠い遠い宇宙に、二人の妖精が住んでおりました。
一人は名を「けんや」といい、星々の間を飛び回って星座を作ったり、太陽と共に動いて月の満ち欠けを守る星の精です。
もう一人の方は名を「ひかる」といい、水のせせらぎや風のそよぎ、大地の躍動などといった全ての物に音をつけて神々の旋律を作る音の精でした。

境界も法則もない闇のみで構成された宇宙で、けんやの存在は「光」そのものでした。
ある時は北極星として旅人を導き、ある時は北斗七星を伴って人々に希望を与え、信仰の念を持たれたりと、迷い傷つきやすい者全ての味方でもありました。
ひかるは追いつく事の叶わないけんやの背中をいつも見て、「いつかあの人と肩を並べたい」と思っておりました。

さて時は流れ、けんやの誕生日がもうすぐそこです。
誕生日といっても星の生誕なので、妖精達にとってはお祭りでした。
植物の精・くららは砂漠でも枯れないバラを、風の精・チトはそよ風を固めて作った喉飴をそれぞれ贈る事にしました。
誰もが浮かれてカーニバルな中、ひかるだけは鬱屈とした面持ちでした。
彼は「音」の担当です。しかし、音は形には残りません。ひかるは何をプレゼントすればいいのか、ずっと浮かんでこなかったのです。
そんなひかるに、くららは諭しました。
「お前は星に音をつけることはできない。しかしな、星からイメージを受けて音楽を作ることができる。」
ひかるはそれを聞くとはっとして、それから自分の家にこもりました。

けんやの誕生日当日、バイオリンを持ってけんやと向かい合うひかるの姿がありました。
「星の輝きを…イメージしました。」
あたかも赤子を揺籠であやすような、甘く清らかな旋律を聞かされ、けんやは涙を浮かべながらひかるに笑いかけました。
「よく頑張ったで。ひかる」
ひかるは、とても幸せな気持ちになりました。


――――――――――――――――

白石ができたばかりの校内新聞から顔を上げる。
「どや!俺の最新作!クリスマスにもってこいな童話テイストの夜話やで。」
「金ちゃん、読んどるうちに寝てまったばい。」
千歳が、携帯のストラップについたまっくろくろすけをいじりながら返す。

「このクソガキがあぁぁぁぁ!!」


《END》

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ