水晶の群生地(庭球CP無し)

□千歳千里の奇妙な午後
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それは、6時間目の時だった。

珍しいな。千歳が居眠りとか…

白石は窓際の席から、右斜め前の席に突っ伏している千歳を眺めていた。
彼の平均以上(異常?)な図体も相まって、まるでちょっとした山のようだ。



終鈴がのどかに鳴り響く放課後。
結局千歳は起きる気配も見せなかった。
白石は、きっと勉強疲れだろうと思った。しかしそれは3年生全員に言える事だ。皆辛いのを我慢して部活に出ているのだから、千歳だけ休ませるわけにはいかなかった。
「千歳ー。もしもーし。もう放課後やでー」
「ん…」
体を警戒する猫のように震わせて、千歳がゆっくり目を醒ました。
「千歳ー。早くないけどおはよう。もうすぐ部活やで。」
「あ、白石…ごちそうさま。」
「は?」
千歳は…

……寝ぼけていた。

「何言うてん。ほら早う部活…」
「あ、ちょうちょばい。動くなよ…」
ぱーん!
「いったあ!!!」
「大丈夫か、龍二!」
哀れな被害者は、なんと我らが副部長。
「何やねんいきなり!俺、何かしたか?」
後頭部をさすりながら、龍二は尋ねる。
「ホンマにごめんな。こいつ今ちょっと寝ぼけとるさかいに。
ちょお、この冬眠中の熊、部活まで一緒に運んでくれんか?」
「ああ、ええで。置いとく訳にもいかんしな。」
龍二が右脇、白石が左脇を支えて、千歳を部室まで引きずって行った。
「千歳、後で覚えとけ…。」
龍二の心からの呟きは周囲の喧騒にかき消され、幸い誰にも聞こえなかった。
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