魔法石の保管庫(チェリまほ)

□お稲荷カフェの黒沢さん11
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この世の中は、何が起きても不思議じゃない。
眼に見える世界と、眼に見えない世界。この2つは常に、微妙に触れ合いながら絶妙な均衡を保って存在している。
神様や仏様がいれば、妖怪神霊の類に魔法使い、天使や悪魔だって、人間が意識していないだけで確かに実在するのだ。
「今日もいい朝だな」
厨房から朝食を運んできて居間のローテーブルに置き、テレビのリモコンを操作した。
ニュース番組で天気予報と占いを確認するのが、俺のルーティンである。

『今日一番のアンラッキーさんは………ごめんなさ〜い!蟹座のあなた!』

そう、この世界は何が起きても不思議じゃない。

『ラッキーアイテムは和楽器!ラッキーカラーは紺色!特に背の高い男性やイケメンさんは、不要不急の外出を控えてなるべく大切な人と過ごすようにしてくださいね!』

凶悪犯罪も。
天変地異も。
戦争も。

『最悪の場合………不慮の事故で死にます』

頭を抱えたくなる程にトンチキな占いも………


朝からショッキングな事を聞かされたが、所詮はテレビ、話題を集めたいが故に大袈裟に言っているだけだと己を納得させた。
「さて、気を取り直してご飯食べよう。仕込みが遅れてしまう」
努めて明るく振る舞う俺だが、酒呑童子は立ち上がって自室から何かを持ってきた。
よく見ると、楽器ケースのようだ。
「黒沢さん、これ俺っちが趣味で時々弾いてる津軽三味線っス。俺っちに出来るのはここまでなんで頑張ってください…」
神妙な面持ちで告げられた。
そのまま食卓について、いつもの調子で朝食を食べる六角。
「頑張れって何をだよ。死なないようにって事か…?全く縁起でもない……」
しかし、ただの星占いにしては対象がピンポイント過ぎるではないか。
今日限定で、長身の男に向かって隕石でも落ちてくるのか?
或いは、イケメンのみが感染する疫病でも発生するのか?
いずれにせよ、店は開けない方がいいと判断した。
幸い、今日は予約も入っていない。
元々趣味と実益の割合が7:3ぐらいだし、臨時休業した所で誰も怪しまないだろう。
「ぬし様、見て」
「ん?」
視線の先には、女狐スタイルに変化した黒狐の清がいた。
紺色の下着は、下はクロッチ部分が総レース仕立て、上は前から開けるタイプのフロントホックブラという際どさだった。
何度も言うが、今は夜ではなく朝である。
「ぬし様は絶対に死なせはせぬ!わらわが守る故、安心して……剥ぐなり破るなり好きにして♡」
俺の膝に跨り、レース部分を擦りつけてきた所でもはや食事どころではなくなった。
「そうだね……死んだらおしまいだし今日はどこへも行かずに愛し合おうね!」
「ぬししゃま、だいしゅき♡ナカにいっぱい来ていっぱいみるく注いでください♡あぁん♡いやぁぁん♡♡♡」


「………っていう初夢を見たんだけど、どうにかして現実に出来ないかな?酒呑童子」
「マスター、寝言ほざいてないでさっさとその玉葱切っちゃってください……」

【完】
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