魔法石の保管庫(チェリまほ)

□『アイドルに食事を与えないでください。』
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清音が在籍する芸能事務所、豊川ミュージック(通称『トヨミュ』)。
業界最大手の『シャイニースタープロダクション』や『ブリリアントブロッサム』とも肩を並べる老舗であり、アイドルに始まり俳優、声優、作詞家、作曲家、お笑い芸人、果ては歌舞伎役者に至るまで、個性豊かな著名人を輩出してきた。
ちなみに、俺もかつてはここのアイドルだった。紆余曲折あって今は作詞家に落ち着いているが。
まぁ、俺の話はいずれまた別の機会に。今日は来客があるんだ………


「アイドルに食事を与えないでください」

トヨミュからわざわざ御足労頂いた『チェリードラゴン』のプロデューサーさんから、そんな通知をぶつけられた。
「プロデューサー殿、全く荒唐無稽で話が読めません。何を仰っているんですか?」
わざとらしいリアクションで返す俺。
「すっとぼけても無駄ですよ。黒沢先生が与える間食のお陰で、清音だけ明らかにカロリーオーバーしていると、寮の管理栄養士から苦情があったんです!」
実はアイドルは、アスリートと同じくらいの栄養管理を必要とする。
体型や体調の維持は無論の事、日々のレッスンで傷付いた筋肉を修復する為のタンパク質、ライブの合間にエネルギーや喉を保護する為のビタミン類を速やかに補給しなければならないからだ。
昨今は、ニューイヤーライブや全国ツアーに専属の管理栄養士を帯同させる事務所も少なくない。
「頑張ってる子にご褒美をあげて、何がいけないんですか?」
ごねる作詞家を、プロデューサーが一刀両断した。
「アイドル達に適量を学ばせるのも、食育の一つです。しかし先生はあの子に考える隙を与える事なく、御自身の欲望のままに高級肉やスイーツを買い与え、清音もそれを受け入れてしまっている。そんなものはただの甘やかしです!」
俺の名誉の為に言っておくが、ちゃんとメンバー全員にご馳走している。断じて清音だけ贔屓などはしていない。
しかし、ダンサーや舞台役者としても活動するリーダー・湊夏や、キレのある振付けが売りのパフォーマー・祐李と比べ、歌唱担当の清音は殆ど動かないのが現状だ。
当然ながら、同じ物を食べていても消費カロリーは違う。
挙句の果てには、太らせて支配するタイプの虐待に近いとまで言われた。
「別に……清音は元々細めなんだから、むちむちしてる方が可愛いじゃないですか。いざとなったらそっち方面で売っていけば…」
反省の色などピンク色に塗り潰して星型のシールでデコってしまったような、ふてぶてしい返事をする。
これくらい面の皮が厚くなければ、芸能界でなど生き残れないからな。
「そういう問題ではありません!とにかく警告はしましたので。改善が見られなければ豊川社長も黙っていませんよ!」
「………承服しました。ではトヨミュのお偉い様方が納得いくように、あの子が運動している姿を見せれば良いのですね…?」
俺は、応接室の中から扉の向こうに声をかけた。
「清音。お話があるからこっちに来なさい……」


「先生、お話ってなあに?」
事務所の寮から帰って来ていた清音が、応接室に入ってきた。
膝の上を指で指し示すと、清音はあたかもそこが定位置とばかりに座った。
頭を撫でてやる俺。
「いい子だ。所で清音、最近ちょっと食べ過ぎだね?プロデューサーさんと栄養士さんが、『このままじゃ清音のアイドル生命ちょーっと危ないかも…』って心配しておられるらしいから、清音がしっかり運動してますってとこ、たっぷり見せてあげようね♡」
「えっ…プロデューサーさんの前でするの…?」
恥ずかしそうに脚をもじもじさせる清音。スカートの端を持ち上げてみると、早くも湿り気を帯びた下着のクロッチが、濃い色に染まっているではないか。
「こら、何を今から濡らしてるの。想像しただけで感じてお潮噴いちゃった?」
布越しに、開花しかけているであろう割れ目を指でなぞってあげた。
「ひぁん!清音は先生だけのはしたないメスだから、すぐおまんまん濡れちゃうのぉ…♡」
メンバーカラーである『知性と神秘のターコイズブルー』が聞いたら泣きそうな、あられもなく蕩けきった瞳で清音がお強請りした。
こうなるともはや『痴性と淫靡』だ。


その後、ソファに組み敷かれてあんあん啼く担当アイドルの姿にプロデューサー殿が引きまくって無言で帰っていくまで、俺達の愛の運動をたっぷり見せ付けてやったのだった………

【完】
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