転がる黒真珠(庭球・高校生)

□止まり木
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アイツといると
心が騒ぐ

こちょこちょ、こちょこちょ、



「一茶ぁー、お腹すいたー」
駄々をこねつつ俺の腕に縋り付いてくるのは、相棒の惷。
「家帰って飯食えば良か。我慢しなっせ」
なんて事ない、部活の帰り。俺はいつもの様に惷と肩を並べて歩いていた。
「ダメ、もう我慢できん。家着く頃には餓死しとっと」
だからコンビニ行こー、と惷は必死で俺を寄り道に引きずり込もうとしている。
「なー、アイス食べたかー」
「お前…腹壊すぞ」
「だけん一茶の頭見とったら食いとうなるたい。」
ソーダ色、ガリガリ君みたいで美味そう、とか言うんだろう。その手で夏中はずっとコンビニに連行された。もう12月たいその手は食わん。
「頭をガリガリされたくなければ言う事を聞くたい。」
「分かった!分かったから食いつくな!」
本当に頭に歯を立ててきよったので、俺も諦めて惷について行った。



「惷、まんだ決まらんと?」
俺は肉まんを買って先に外へ出ていた。カイロ代わりの肉まんは冷えた手に心地良い。
「んーーもう少し……あった!コレたい!!」
アイスを買うのでは無かったのか。なしてそげんも時間のかかる?
等と考えていたら惷が会計を済ませてこちらに走ってきた。手には自分のアイスと、何故かおにぎり。
「コレ、どうしても今日買いたかったとね。」
惷の手に収まるおにぎりのパッケージを見る。
「期間限定 馬肉時雨煮…?」

「一茶、誕生日おめでとう!」
掌中の珠を扱うように両手でおにぎりを持ち、手渡してくれた。
「あ…ありがとう」
惷…だから今日に限ってあんなにもコンビニに行きたがってたのか…
しかし何より、誕生日を覚えていてくれた事の方が俺には嬉しかった。
「なんか、母の日にカーネーション貰った母ちゃんみたいな気分たい」
「何ねそれ?」


こちょこちょ、こちょこちょ、

ああ、解った

これは多分
母性本能をくすぐられる音



「一茶、これからもずっと一緒に居ってくれると?」
「当たり前ばい。俺は惷を置いてったりせんよ」


《END》

一茶先輩ハピバ!
惷と末永くお幸せに!!

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