水晶の群生地(庭球CP無し)

□ミネラルショップ・千歳
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商店街の一角にひっそりと佇む、小さいけれど小綺麗なお店。
流木を組み合わせて作った看板には、『ミネラルショップ・千歳』と記してある。(ちなみにミネラルショップというのは、天然石やパワーストーン(場合によっては宝石)を扱う店舗の総称。)

これは、ここの店長と唯一の店員、そして個性的な客達が繰り広げる不思議なお話である……



客の掃けた店内を、たった一人の店員が忙しく動き回る。
石達に積もった埃を丹念に払い、綺麗に配置を整え、床を掃き清める。彼が動く度に金髪がふわふわと跳ね上がった。
彼こそが唯一の店員、忍足謙也である。

謙也は掃除が終わると、カウンターに戻って台に突っ伏した。「はあぁぁ……」と、粘っこい溜息が漏れる。
「どないしよ……暇すぎて餓死しそうや。」
そう。ぶっちゃけ……

お客さんが来ないのだ。

巷を騒がせた金融危機の煽りで、どの企業も近年稀に見る経営不振に陥っていた。
そして、このささやかなお店も例外ではなく……。

溜息を聞き付けた店長の千歳千里が奥から出て来て、謙也の前に立った。
「すみません店長…俺の働きが悪いばっかりに。」
「何言うとるね。謙ちゃんはよく頑張っとるばい。」
千歳は大きな手で謙也の頭をなで、柔らかく微笑んだ。
畏縮していた謙也の表情も、少しずつ和らいだ。
大学を出たばかりの頃、やりたい仕事が見つからずに、路頭に迷っていた自分を拾って仕事と住家を与えてくれたのが、店長の千歳だった。
謙也は、千歳の助けになる事なら何でもしてやると心に決めていた…。


それから数日後の事だった。
今まで神様に見捨てられてでもいたかのように、突然注文の電話が入ったのだ。
謙也が慌てて受話器を取る。
「あ、ありがとうございます!早速店長に取り次ぎます。」
謙也は、裏でアニメのビデオを見ていた千歳を叩き起こして引っ張って来た。
受話器を取った途端、千歳の表情が変わる。
「もしもし。アクセサリーのお仕立てから石の浄化まで何でもござれ、ミネラルショップ・千歳でございます。
この度は当店をお引立て賜り、ありがとうございます。して、どのような御用件で?」

(いつもながら、仰々しいやっちゃなー。)
謙也が内心ツッコミながら、千歳のやりとりを見物していた。

依頼人の話はこうだった。
就職祝いとして父からピンクトルマリンをもらったが、戯れに貸してみた友人や兄弟、使用人までもが何故かみんな奇行に走るというのだ。もっとも、外せば元に戻るので大事にはいたってないが、気味が悪いということで浄化を依頼したのだ。
依頼人と交渉し、店で直接話を聞けるようになった。

さて、2人はどんな事に巻き込まれるのでありましょうか………
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