黄水晶の書棚(その他二次創作・一次創作)

□異説・よだかの星〜ベテルギウス誕生秘話〜
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天の王様は、鈴と星の煌めきをいっぺんに集めたようなしゃらしゃらと厳かな優しい声でよだかに語りかけます。
「よだかよ、此度の親善試合まことに大義であった。そなたの望みは『星になる事』であったな。星とは星座の事か?」
よだかは平伏したまま答えました。
「天の王様に申し上げます。確かにわたくしめは初めこそ、星座になりたいと鳥の身分で大それた夢を持っておりました。しかし『友』との出会いにより、そんな事はどうでも良くなっていたのです」
「ほぅ、してその友とは?」
「冬の星、オリオンさんに御座います」
よだかが、凛と声を張りました。
「わたくしは独立した星座になるより、オリオンさんとこれからも仲良くしとう御座います」
それが、よだかの答えの全てでした。
「よくぞ申した。友を思い慕うその赤誠、この天の王確かに取り上げたぞ…!」
天の王様がぱちぱちと手を叩き合わせて、よだかを讃えました。
天の王様がよだかの頭に手をかざすと、温かい光に包まれてよだかはいつの間にかオリオンの右肩に止まっていました。
まるで最初からそこが定位置だったかのように、勇者が幾ら手足を振り回しても落ちません。
「心の友よ、また会えて嬉しいぞ!」
「僕もです!オリオンさん」
それからよだかは、オリオンの右肩で耀き続けました。
地上で途方もない年月が過ぎた頃、人間達は夜闇に希望のように白く燃えるその星に敬意を示して、『ベテルギウス』という名を贈りました。
皆さんも、冬になったら空を見上げてみてください。
大犬のシリウス、仔犬のプロキオンを結んで大きな三角形を形作っている『よだかの星』がきっと見つかる筈です………

【完】
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