BT短編2

□RAIN
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いつの間にか闇に飲み込まれた空は、不機嫌そうに雨を零していた。





少し小さめの傘を傾けるようにして、家への帰り道を歩いていた。

ふと、黒ばかりだった視界に白い物が写った。
気を取られてそっちに視界を向けると、そこには雨に濡れて白髪の男が立っていた。


(風邪ひくんじゃ‥)


見ず知らずのよくわからない相手にまで気を使ってしまう。
こんな性格で損をした事がないと言うなら嘘になる。
友人達にだって、程々にしなよと呆れられる。

だけど、何か困っているのなら、私で助けになるのならなんとかしてあげたい。
見て見ぬふりをするよりずっといい。



そんな気持ちで、声をかけた。





「あの、同じ方向なら、入って行きませんか?」
「‥…俺?」
「はい、あの‥傘、小さいんですけど…」


声をかけるまで気にもしなかったが、その髪色と違い男は随分若く、しかも端正な顔立ちをしていた。
その驚きもあり、ついしどろもどろになりながらも、傘を傾けた。


「‥何も、返せない。だから、いい」
「え?あの…!」


男はそれだけ言うと、傾けていた傘を軽く押し戻し、未だ勢いを止まない雨の世界へと歩いて行った。










これが、私と彼の出会い。

運命の歯車が哀しい音と共に廻り出した瞬間。



神様、貴方は残酷な愛しか教えて下さらない。










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