笑え。

□三章
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♪〜ラララ〜…ララ〜









左近「クスクス、お嬢ちゃんご機嫌ですね」

三成「ふん」


あの娘が来てから、もう何刻たっただろう…外は暗くなっていた


左近「可愛らしいですね」

三成「左近…それは撤回しろと言ったはずだ」

左近「だって風呂に入って鼻歌なんて…クククッ」

三成「…呑気なやつだ」


あいつの鼻歌を聞きながら
まだ終わらない執務をする

左近「さっ、殿もそろそろお休みになられてはいかがですか?」

三成「まだだ…まだ終わっていない」

左近「そうですが…あら?」





トントンと軽い足音が聞こえる
この気配は先ほどまで鼻歌を
歌っていた張本人…


その歩き方、その気配
全てが気ままなものだった
もう少し神経を張れというのに



「あ〜っ、気持ちよかったぁ」

左近「それはよかった…って!なんて格好をしてるんだよ!」

「へ?」

左近の焦った声を聞き
俺もすぐ様振り返る

「あれ?おかしい?」

その姿は、寝衣を肌せている…
肌けてるのレベルではない
両袖を通さず、下にぶら下げ
裸同然………


三成「そこに直れ‼︎恥を知れっ‼︎」

「え?え?急に怒った!!」

左近「これは名無しが悪いですぜ」

「うそっ!」

三成「煩い!早く寝衣を着ろ!莫迦もの!」

「寝衣って、これ?暑いよ…」

三成「煩いっ!!」

あいつの側までいき、袖を通させる。なぜ俺がこんな事をせねばならぬのだ
苛々する…この怒りをあいつの帯にぶつける

「く、苦しい」

三成「自業自得だ」

「そんなことない気がする」


三成「お前は恥を知れ!なんと破廉恥な格好をして歩いているのだ!ここは安全だが、安全では無いのだぞ。何があるかわからないのだ、襲われでもしたらどうするのだ!お前のその格好では誘っているようなもの!わかっているのか、この莫迦ものが!髪も濡れ、そんな火照った顔で、裸同然………莫迦にも程が有る!おい、聞いているのか!!」

「はぁ…」

三成「…………」


俺がこんなに怒鳴っても、泣もせずキョトンとした目で俺を見つめる…

全然わかっていないのか…?
なんだその目は…


左近「名無し…?」


キョトンとしたまま動かないあいつを見て左近もどうしたのか心配している


三成「何とか言ったらどうだ」

「……えっと、まとめると…心配してくれたってこと?」









三成「……は?」






「だって、そうだよね!こんな格好で歩いたらこの世界では危ないって事でしょ?」

左近「クククッ、その通りだ…」

「わぁ!うれしいっ」


今度は俺が思考停止する番だ
何が起きている…?理解できん。
なぜ、こいつは喜んでいる?
俺に説教をくらい喜んでいる?

挙げ句の果てには、抱き付いてきてる…


三成「離れろ!鬱陶しい!」

「だって嬉しいんだもんっ」

三成「何がだ!何がどうなっている!」


寝衣なので、こいつの体温がすぐに伝わる…何故かいい匂いもする…髪は濡れていて………


三成「鬱陶しいっ!!!」

左近「殿、一本取られましたな」

三成「左近見てないで、こいつを離せ!」

左近「はははっ、この左近、今なら殿に勝てる気がしますな」

三成「煩いっ!」

左近「やってみましょうかね?」


嫌に挑発的な笑みを浮かべる左近
軍師の左近だ…何か考えている


左近「嬢ちゃん」

「はいはい?」

左近「殿はもう何日も寝ていなくてね…困ってるんだ」

「なっ!それは本当ですか!」

左近「今もそろそろ寝てくださいよ、と言っていたんだが、殿に断られてね」

「それは大変!睡眠が一番大切なのですよ!」

三成「それはお前が好きなだけだろう…」

「なっ!どうしてそれを!」

三成「睡眠と聞いただけでお前の目が輝いたからだ」

「睡眠は素晴らしいです!まさに幸せっ!その睡眠をとっていないとは…何と残酷な!寝ますよ三成さん!」

三成「煩い、俺はまだ執務が残っているのだ」

「明日すればいいんですよ!私も手伝いますから」

三成「読み書き出来ないお前に何が出来る!」

「応援ですよ!お掃除も出来ますよ!」

ねっ!とキラキラした顔でいわれても…なんの得にもならない
こいつの頭はどうかしている

その通りなのか、左近は面白くて堪らないらしい。肩が震えている
なんという屈辱だ


左近「クククッ。さっ、殿。ぷぷっ…隣に布団を敷いて起きましたのでどうぞ」

三成「左近…覚えていろよ」

左近「はて、何のことでしょう?あー、怖い怖い…クククッ」

この辺でお暇します。
お疲れ様でした。
と笑いながら出て行った左近
左近…許さん…


「ほら、三成さん、お布団の中に入ってください」

俺の背中をグイグイ押して
隣の部屋へと移動する
俺も頭が悪いわけでは無い…
こいつは言い出したら聞かない
今は好きにやらせておけばいい
寝たふりをして、あいつがいなくなった時に執務に戻ればいい

はぁ…と深いため息をついた
長い休憩をとったと思おう…

はぁ…





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