笑え。

□二章
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「さ、名無し。そろそろ殿の邪魔になりますから退散しますよ」

『え、いやだ』

「行け、ばかもの」

『嫌です。此処に居ます』

「煩いのは御免だ」

『静かにしますから』

「あはは、殿。」

「……茶を淹れて来い」

『はいっ!!』


勢い良く立ち上がり、炊事場へと走って行った名無し
炊事場の場所を知らないだろうに…

その様子に三成がため息をつく


「ははは、可愛らしいお方ですな、殿」

「どこがだ。お前の目は節穴か」

「賑やかになりそうです」

「……煩いだけだ」

「さ、迷子を捕まえてきますよ」

「……頼む」

「はい」


笑を堪えてその場を去る島左近
これから面白くなりそうだと呟いていた









やっと静かになったと
また、ため息を漏らす三成


目の前にある文に目を通すが








(嬢ちゃん、そっちじゃないですぜ)

(どっちー???)

(そこを右です)

(はーい、っうわ!)

(え、え?ちょっ、はははは!)

(笑ってる場合じゃなーいっっ)

(だ、だって、ははははっ、腹いてぇ…)




「…………………」



遠くからでもキンキンと聞こえるあいつの声

集中出来るものも出来やしない
自然に眉間に皺がよる

左近も左近だ。

何を一緒に騒いでいる


(助けてぇ)

(くくくくっ、そのままでいいじゃねーか)

(やだよ、うぅ、はやくっ!)

(やなこった)

(やだやだやだぁ!!)



プルプルと震える筆

もう我慢が出来ん…

ドスンと大きな音を立て
立ち上がる三成







「うるさいっ!!!!!」



大声でまだ笑っている左近の頭を全力で殴った



「いったぁ…殿、そりゃ無いですよ〜」


その場にしゃがみ込む左近
その様子をみた三成は鼻で笑い

「当然の事だ」

事の発端を起こした張本人を探そうとしたが、すぐに見つけた







「………何をしている」


『えっと、ですね…』

「………………」

『足、挟まりました』

「………見ればわかる」



床の底が抜け
片足が抜けないらしい

それを面白がって笑っている左近と涙目に訴えているあいつ…


そんな様子を見ると怒るのも失せた


「はぁ。莫迦だな」

『みつなりさ〜ん…』

「殿、傑作でしょう。こんな事が起きるなんて、お嬢はもってますね」

『うわぁぁ〜ん!』

「あ、やべ。また泣かしちまった」


名無しが泣き出した途端
やっちまった…。と顔色を変え
すまなかった泣き止んでくれ、な?と名無しをあやしにいく左近

はたから見ればもう兄妹のよう
いつの間に心を開いたのだ左近…

何故か胸がムシャクシャとする

うぅっ!と近寄る左近に攻撃をする名無しに、眉を下げ、そう怒るなよ。と苦笑い

莫迦らしい。

そう思い、自室に戻ろうと背中を向けたその時


『三成さんがいいっ』

「おいおい、殿に手を焼かせるな」

『三成さん、助けてください』


振り向けば、涙目で手を差し伸べている名無し







はじめから そう言えばいいものを








『え?』

「早く手を貸せ」

『はいっ』









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