ぶんしょう
□マリアローズ争奪戦
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「やあ、マリア。今日もキミは美しいネ」
吐息を、耳元で感じた。
ぞくりと、体が震える。もちろん気色悪さゆえだ。それ以外なんてありえない。
少なくとも、女がコイツに抱くような感情なんてものは、これっぽっちも。……ああ、なんだよもう。
「げっ、出たな変態」
あくまで無感動に言い放ったのに、黒ずくめの変態は全く気にしていない様子だ。
もしかして、そっち系の人間か。
どっちにしろ僕の手には負えない変態だってことだけが確かだった。
「フフッ、マリア、ボクに会えて嬉しいからって照れなくてもいいんだヨ」
何、コイツ。頬まで染めてるし。
うわっ、超絶壮絶気持ち悪い! 超最低!
腰の辺りに手を伸ばしてきた変態の頭部を、がっしりと掴んだ。
……うう、なんで僕がこんな目に。
「うるさい変態。っていうか、キモい。離れて」
マリアローズは全力でアジアンを突き飛ばしたつもりだが、向こうはほんの少しよろめいただけだった。
アジアンが、可愛らしくきょとんとしてから、すぐさま不快指数MAXの素敵笑顔を浮かべた。
不快指数はもちろん、マリアローズが見た場合のものである。
「マリアは照れ屋さんだネ」
マリアローズは再び突進してくるアジアンを必死で避けようとした。
「だああああっ!しつこい、バカ!」
まんまとマリアローズの細い腰に抱きついたアジアンが、ぴくりと一瞬、不自然に動きを止めた。
纏う空気がひんやりとしてくる。
え、何、どしたの。僕何かした? いや、全力でラヴマックスとやらを拒否って入るけど! それは不可抗力ってやつで……!