感情のジグソーパズル。
□貴女が笑うから
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マントは初めて着たのに纏い方を知っていたのはグウェンを見ていたから。遠出するときによく纏っていた。
私が着ているのもよく遠出する時に着なさいと言われていたもの。
でもコレを着ると羽が燻られて…むず痒い。
けど今はそんなこと言ってられない。解ってる。
眞王廟に行かなきゃいけない。
行きたくないけど…
でも…
あの人に会わなきゃ行けないんだ。
辺りを見回して静かに走る。
ギュッとフードを掴んで震えをごまかす。昼間…グウェンに心配をかけてしまった。
それが悔しい。
「っ」
下唇を噛み締める…月が眩しいなぁ…と見入られたが直ぐに振り払い歩きだそうとする。
が、だれかに抱き抱えられる。
思わず悲鳴をあげそうだったけど口を押さえ振り返る。
そこにはよく遊んでくれるあの人が居た。
「…ぃえ…ちゃ…?」
「アンタは変わらないなホントに…」
「どうして…?」
「閣下のお申し付けだ」
「ぐうぇん…?」
ドキッとした。
この状況に彼が関わっている事に疚しい気持ちが、怖いという感情になった。けど叱られるのが怖いんじゃない。
彼にこの状況をばれることが怖かった。
初めて彼の言葉に逆らったから。
オレンジの髪の彼は抱き上げたまま真剣な表情をした。
「何故、閣下に言わないで勝手に行こうとするんです?」
「……っ」
「千代…黙ってちゃわらかないぜ」
「なら…いわないもん…!」
「…そうきたか…じゃ、このまま閣下の処に連れてく」
泣きそうになる。
それに困ったような表情をしている。
「千代、眞王に会いたいのか?」
「ちがう…っ」
「なら…」
言いかけた時癇癪玉が割れたように声をあげる。
「ずっと…ずっとこのままじゃダメなんだもん!」
その言葉に焦りと疑念が渦巻いた。
泣いて嫌なのに行こうとするのは何故?千代はそこまでしてなぜ眞王廟に行こうとするんだ?
このままで良いじゃ無いか、何が…何がいけないんだ?
こんな幼い少女は何を背負っているんだ?
「ぐうぇん……かなしませてるの…千代なの……千代はふつうの魔族でも人間でもないから…めいわくなんだもん…だけど…やさしいから…むりしてるんだもん…」
「千代…そんなこと……」
「千代は…千代なの……なのにぐうぇんはゆーりは………違う人をよぶの…私は千代なのに…」
追い詰められて輝かしい美しい白い羽は床に引き付けられるように垂れていて、千代はえっくえっくと泣いている。
嗚呼、だから…また…また彼の処に引き付けられるのか。
身体は知っているんだな。
ギュッと抱き上げた。
「千代…閣下は好きか?」
「うん…」
「閣下の傍に居るのは嫌か?」
「…」
「閣下は千代を好きじゃないと思うのか?」
「…」
「はぁ…んじゃぁ閣下が昼間…あんなに心配したのは…千代が珍しい生き物だからというんだな」
顔をあげて首をふる。
「千代…が好きって…いってくれた」
「何年も千代に言えなかった言葉を千代は聞けたんだ、それは凄いことだと思わないか?」
「それは…千代がすきってこと?」
「それは閣下に聞くんだ」
聞ける訳無い。なんて言えなかった。だから…泣くのを我慢する。
「…あいたいのっ!眞王にあわなきゃいけないのっ!!!!」
千代をすきって言うときね…ぐうぇんすっごい苦しそうだったんだよ?
ぐりえちゃんは後ろに居たから見えなったでしょ?
千代はねそれを見て…解ったの
その言葉は私に向けられてない。
私じゃ無いんだ…
そう解ったんだ。
だからね…はなれなきゃダメなんだって。
離れたくないっ傍にいたいっずっとずっと…一緒にいたいよぉ…
「あいたい…千代がすきなのは眞王さまだもんっ……だから…ぐりえちゃん…千代はなして」
「千代…これじゃダメなんだ…」
「離してっ離して!!!!」
「繰り返しになっちまうんだよ」
ぐりえちゃんは…悲しそうな顔をしていた。
だからね…
決めたの…
「くりかえさないよ…ぐりえちゃん…なかないで」
ココロをしまおう。
そうだよね?
ココロをしまって…私は私を違う生き物だって否定したらいいの。
ぐうぇんともゆーりともげーかとも違う生き物だって…弁えたら良いの
くっつかなきゃ良いの
話さなきゃいいの
「千代…?」
「ヨザック…千代ね…ヨザックのかなしい顔やだよ…」
ある道を進んだらいいんだね
此処に敷かれてる道は何処に繋がってるか…それは見えるんだ。
ずっと一緒はダメなんだって
囁く声が私は悲しいの…