感情のジグソーパズル。
□カーテンの星空
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千代は一ヶ月眠ったままだ。
綺麗な身体を何度も汚す様に抱き合った。
彼女がもう目覚めなかったらと夢見るだけで身の毛が弥立った。
隣に眠る彼女は人形の様に美しい。汚れることの無い白。染まることの無い純白からはつくづく自分との違いを思い知らされる。
編み物を辞められない指。
身体が覚えている記憶。
彼への底知れない恐怖。
「千代……」
恋の無い愛。
愛を知らないまま終わりを告げた恋。
小さな身体はもう限界を超えていたのだろう。
それでも…お前を手放せない。
執着はプライドなのか、愛着なのかは解らない。けど、確かに…俺には千代が必要なんだ。
「千代…俺を一人にするな……」
求める理由に愛を唱える。
「千代…千代……」
揺さ振るが、ちっとも反応が無い。
人形のようだ。
時々震える千代。
正霊天使。
それは、白い聖霊天使にとっては夢だ。
主と深い絆で結ばれると、聖霊は浄い感情で満ち白銀の翼を得ると。そして天使の冠を大天使から頂き、末代まで加護が得られると…
千代は白い天使の末裔。
彼女は天使の他、聖霊からも膨大な期待と信頼を齎されていた。
その裏切りの罪は計り知れない。
傷ダラケの姿は聖霊天使とは言われるまで気づかない姿だった。
心は閉ざされ、重しを着けた手足。
漆黒に染まった髪の毛。
壊れていく…感情。
壊れていく…笑顔、涙腺…
「千代、そんなに自分を傷つけるな」
アキレス腱を握っている本人は、全然解っていない。
今日は腕…昨日は指。
聖霊天使の夢は具象化する。
どんな夢を見ているんだろうか…
きっと…地獄の一ヶ月を見ているんだろう?
目覚めてなにも無かったらまた聞かせてやる。
楽しい日々を。
また出かけよう、一緒に…
だから早く…目をさませ……
「起きてくれ……」