感情のジグソーパズル。
□困惑する親子。
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千代が帰ってきた。
少し大人びて…
だけど…豊かな表情を見る事は出来なかったんだ。
フォンカーベルに入り浸りあまり戻らなくなった。
ましてや、アニシナが来ても千代は全く寄り付かなかった。
千代の開発商品はよく売れていた。
そのサンプルは手元にある。
アニシナが送ってきたメッセージ動画には眼鏡をかけ少し照れ臭く困ったように映る千代。
『千代、笑いなさい』
『姉様…急に…ってまたですか』
『またとは何ですか。貴女が笑わないからです。あ、千代その書類は私のですよ』
『姉様、私の書類と混ざってるじゃないですか…あぁこれは有利へのだわ…コッチはグウェンダル閣下のだし…もう!姉様!』
『千代…少しは大雑把になりなさい。貴女はいつもそうして…』
『姉様は大雑把過ぎです!』
『千代…はぁ』
『もぅ…あ、姉様!良い香りの紅茶が来ましたよ!ティータイムにいれますね』
『えぇ、お願いしますね』
『はいっ』
幸せそうに笑う。
昔と何一つ変わらず…ただ…本心からではない。アニシナの為に。
『それ、どうするんですか?』
『ふふふっ聞きたいですか?』
『質問を質問で返さないでください』
『あ、そういえば明後日は結局どうするんです?』
首を傾げる千代。
アニシナが机にカメラを置いたのか音しか聞こえなくなる。
『え?…あぁっ…うそ!?』
『貴女…忘れてましたね…』
『すみません…あぁどうしましょう…ドレスも靴も……』
『参加…するつもり…なのですか?』
『え?は、い…ダメでしたか?』
『なら、向こうに何故鳩を飛ばさないのです』
『ああぁっ』
『はぁ……連絡をして、ゆっくりお風呂に浸かって来なさい』
『はいっ先に失礼します』
『まったく、あの娘は夢中になるとすぐ…あら?まだ電源が……』
ブツッと音声も消え、ふとカレンダーを見る。
今日は何かあったか?
と思い睨めっこをしていると、ドアを叩かれ返事をする。
そこにはグリエがニコニコと至極機嫌が良さそうだ。
「閣下、陛下が……あれ?まだ準備なさってないんですか?」
「準備?」
「っ!…閣下……今日は春祭ですよ」
すっかり忘れていた。
春祭とはユーリが言い出し去年から始まったお祭りだ。
春の訪れに感謝だとか言い上を集めて祝ったら社交パーティーみたいなモノになってしまったんだ。
あの頃は千代には留守番をさせていたから…
そうか…今年は…
感傷に更けてる場合ではない。
と気合いを入れ直した。