恋は盲目。
□仕事と俺、どっちが大切なの?
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「幹也……仕事の時間よ」
「千代ちゃぁ〜んっ」
またよそから女を連れ込んで…
よくよく見ると発注ミスのサンプルを着ている女の人。
幹也の膝に座って戸惑う女の人の前に行き、ぐいっと顎を掴む。
「どぅ?かわぁいいだろぉ」
「……綺麗な黒目…睫毛も唇も鼻も良いわ」
「ぁ、っあ…やっ」
女の人の胸を触る幹也。
私の反応を見たいだけなのよね?
「千代、貸してやろうか?」
「……」
「困ってんだろ?イロイロと」
「っぁああんっ…はぁっ…あん…」
あぁ、そうか!
口元が緩み手で隠す。
「ねぇ、幹也…この子欲しいの。」
「へぇ〜今日は流石に素直だねぇ、しゃーちょっ♪」
「んぁや…しゃちょう?さん?」
「名前、教えて」
「み、みゃ……」
「美弥?OK。で?幹也、どうしたら良い?」
柴幹也は私の部下。
見ての通り下半身しか動きは良くない。が、たまに頭がキレるから仕方なく飼ってやってる。
不本意ですけどネ!
通称シバチャン&ミッキー。んな可愛くないわ!と毎回思うがイケメンというやつらしく仕方ない。かなり女ウケは良い。
なのに…なぜ幹也が私にくっついて歩くかは解らない。
何処に居てもだいたい傍に居て私を影から支えてくれているのを知っている。まぁ、最低な野郎にはなんら変わりは無いんだけど。
「ねぇ、千代ちゃぁぁん…俺さ…最近刺激が足りないんだよぉ〜ねぇ?わかるでしょ?」
「また…私にやれってか?」
「ん?解ってんじゃん♪俺はさ大好きなんだよ〜アレの姿〜ねぇ…また見せてよ…俺そしたら君の為に世界中平和にしちゃうよ」
舌打ちをしていると紙袋を取り出し女の人にキスをする。
「俺、シャチョーにぞっこんなんだよねぇ〜くははっ」
投げ渡された紙袋の中は案の定。
念押しに「嘘ついたらクビだからな」と言うとヘラヘラしていた。
そして一枚ずつ、脱いでいく。
一枚、もう一枚…ゆっくりゆっくり…女の人まで見ていて流石に照れる。いつもは幹也のスケベ視線だけだが…ちょっぴり頬が赤くなる。
きっと幹也の思う壷だ。
幹也の椅子に女の人を座らせ頬にキスをして上着を着せて近寄って来る。
「シャチョーえろぉっちょまじで…はい、腕通して」
「はいはい…!ちょっと!!」
「なんでキレるかなぁ〜汚物を見る目はやめて〜?髪の毛は緩く三つ編みが良いね」
「お前は私で遊んで楽しいのか?」
「うんっスッゴくねぇ〜モノに出来たら死んでもいいぜぇ?まぁその前に忍ちんに殺されるよねぇ」
苦笑しながら三つ編みをして、ぼんぼりをつける。
「ほぉーら。かぁわいいっやべぇタチs…んがっ」
「下品は顔だけにしろ、な?」
頭を撫でて、私を美弥さんの後ろに立たせる。
指を広げカメラのようにつくり見ている馬鹿男に私は美弥さんと顔を合わせた。
「シャチョーって…?」
「あぁ、私、一応アイツの上司なのよ。それでその可愛いベビードールのデザイナーでもあるの」
「noa箱の?し、社長さん?!」
「そうそ、よろしくね美弥さん」
真っ赤な顔をますます赤らめ、立ち上がり…飛びつくように唇が私の唇の端に当たる。
「noa箱…大好きなんですっ…」
「あーずりぃ〜美弥だけずりぃ〜…あ、いぇ続けて続けて?生百合ロマンを続けてぇ〜」
とりあえず、幹也を無視する。
うざく、害だから。
「デザインとか…あと香水や下着や水着、会員メンバーでも2名限定の着物も…素敵で…素敵でっ私っ…」
「あ、あなた!もしかして…葉山美弥さん!?」
新商品が出ると必ず当日に注文が来る。限定商品や企画内でもウチの商品を愛してくれてる。
毎月可愛らしい手紙も届く。
奥野がそれを読んで「お金持ちなんですね」と少しそっけなく言っていた。
「ど、う、して?」
「毎月読んでるわ、手紙。ネットの読者アンケートも…ね?」
「嘘っ」
「本当さ、ウチのシャチョーはマメだからね」
「何処を触っているの?え?死にたいって?やだ〜それなら早くい、えよっ!」
床に転がる幹也は本望と鼻血で書かれていた。
「う、れ…しっ……」
「なら、こんな事はやめなさい」
目を見開く美弥さん。
私より小さくて頭を撫でる。
「幹也はねパチンコでスッテンテンだから無いわ」
「っ!」
「だからね?貴女、此処で専属モデルをしなさい。」
「ふぇ?」
幹也が後ろから抱き着いてきて、私の足りない言葉をぺらぺら言う。
「シャチョーはね、今、その服とモデルが居なくてピンチなのよ、だーかーら、君が…シャチョーのピンチ救ってほしいんだ」
「でも、モデルなんか…」
「大丈夫大丈夫大丈夫!見てごらん!胸揉んだって色っぽい声あげないシャチョーよか、君のが何百倍も可愛いって!いや、まじで!」
「触るなハゲ!本当に死ぬか?」
「シャチョー黙ってよ〜、まぁ、はっきり言ってシャチョーはお人よしなの。」
「っ…私…なんか迷惑…ですよ?」
「あぁ家か〜俺ん家は部屋あまってっけど…」
「家?」
「天涯孤独ってやつ?」
「ちょっと待て、今いくつだ?」
「20です…」
「バイトは?家は?」
首を振る美弥さんに飽きれ頭を抱えた。
「解った、解った…私がどうにかしよう…初任給は25万だ。それに見合う様に働きなさい」
「は、はいっ!」
着替えてこいと隣の部屋に行かせる。と、くらっとする。
目の前が白く光って目が痛いぐらい。
幹也に支えられながらソファーに座る。
「悪い…っぅ」
「また無理してんだろ?」
「してない。悪い10分寝かせてくれ」
幹也の膝を枕に有無を聞かずに眠りにつく。
幹也はね私には手出さないんだよ?私が嫌だと言ってるんだから。
「シャチョー…アンタ俺を買い被り過ぎるとこは…可愛いよ」