恋は盲目。
□ちょ!?マジ無理
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そんなこんなで、始まった。
一人なのに5LDK。
だだっ広い上に、何にも無い。
家具は自分で買えって…チラッと通帳を開く。
「!?何コレ」
数えるのもバカらしくなるほどのゼロ…
何が無駄遣いはダメよ、だ。
いくらまでが無駄遣いか分かりゃしない。
とりあえず、母の知り合いの高校に転校することになった。
理由?前の高校が此処から遠いから。執事長の奧野曰く『お嬢様にそんな距離を歩かせるわけには行きません!私を心配で殺すお積りですか!?一人暮らしというだけでも心配ですのに…良いですか?知らない人には着いて行ってはなりませんよ?たとえ、飴をくれるといっても絶対に、罠ですからね!あ、あとゴミの日は守ってくださいよ、料理をし終わったら必ず元栓を閉めてください、良いですか!?出かける際にはキチンと身なりを整えて、鍵を閉めて出かけて下さい。良いですか?解りましたか?あと…』を半日聞かされ、反論の余地もツッコミさえ出来なかった。
だから…
「奧野、これから買い物に行こう」
「はい、車を用意させます」
「いやいや、徒歩で」
ムンクの叫びみたいな顔をしている奧野。そう、もうそんなに心配なら傍に居て良いと言ったんだ。じゃなければ三日は聞かされていただろう……
「電車とか地下鉄とか乗りたいし」
「い、いけません!何があるか解りません…そのような所に…」
「良いじゃん、奧野が居るんだし…さーて準備するよ」
奧野は私と同い年。
産まれた日、時間が同じ。
産まれた時から一緒だ。
奧野は母の家系に使える執事、私はお嬢様兼お嬢。
関係はともあれ、兄妹の様に育って来て今回も同じ高校に転校することになった。
奧野は何の準備の事かとキョトンとしていた。
「奧野も私服に着替えなよ、それと千代って呼んでね、お嬢様はマジ勘弁」
「え!?あ、しかし…」
「早くしなよ、日が暮れる」
「はぁ…解りました」
「敬語も」
「それは勘弁してください」
奧野の困った顔は私だけのモノ。
ちょっと優越感。
着替えを済まし、髪の毛を結び軽く化粧をして準備OK。
テレビだとか、冷蔵庫だとか買うぞー!
と意気込み、リビングに戻る。
と、髪を下ろして清楚な感じの男の人が…
「どちらさん?」
「…はぁ…奧野です」
「うっそ〜…兄さんよりカッコイイ」
「リク様には叶いませんよ」
「そんなこと無い!うわー私服姿初めてかも」
まじまじと見ていると、咳ばらいをしている奧野。
「そんなことより、時間がありません。千代、行きましょう」
「うん!」
手を差し出す奧野。
「迷子になられては困ります」
「っ!はいはい…」
手を繋ぎ買い出しに行った。
奧野に教えてもらいながら、地下鉄を乗り継ぎ、目的地まで向かった。
電気屋さんには沢山のメーカーのテレビやらパソコンやらがあり楽しかった。
「奧野!奧野!あれは何?」
「あれは掃除機ですよ」
「奧野!あれは?」
「炊飯器です」
「奧野!奧野!」
「お嬢様……落ち着いて下さい、まず目的のものを買いましょう」
そう言い叱られた。
頭を撫でられ、手を引かれながら必要なものを買い揃えていく。
奧野は物知りで、選んだものの性能や質を教えてくれたり、私には勉強になった。
同い年なのに…
私は何も知らないんだ…ホントにただのボンボンだ…