お題

□本音。建前
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傷付いたような顔をした。
否、オレが傷付けたと思っただけか。
酷く脆く見えた。
コイツは、強いんやなかったか。
自分より何倍も。
何故こんな、今にも壊れそうな顔をする。
その傷の下の瞳で、何を見てるんや。
後ろから見つめていたその背中は、とても細く小さかった。
声をあげて泣けばいいと思うのに、無器用すぎるコイツはそれが出来ない。
『戦えない』と言っていた。
あれは本音だった。
『大丈夫』あの言葉は嘘や。
コイツは誰や。
『井宿』はこんな男やったか?
今にも消えてしまいそうな、そんな儚い奴だったか?
そう思った次の瞬間、本当にどこかへ行こうとするように歩き出したから。
とっさに抱き締めていた。
その体はやっぱり細くて。
オレの方が泣きそうになった。
何を言っても届かないんだと悟った。
全て微笑みで流されてしまうから。
なら、オレが代わりに泣こうと思った。






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