お題

□本音。建前
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せめて少しでも距離をとろうと一歩踏み出す。
その瞬間、重力がなくなったような倍になったような、妙な浮遊感を感じて。
「…翼宿?」
気が付いたら、抱き締められていた。
包むように。
「…全然大丈夫ちゃうやんけ」
その腕の力に少しだけれど痛みすら覚えて、言葉に驚いて。
思わず彼を仰ぐように顔をあげた。
「何…泣きそうな顔してんねん」
泣きそうな顔をしてるのは翼宿の方だ。
そう言おうとして、口を開いたのに。
「…泣きそうなんかじゃないのだ。ホントに大丈夫だから」
また嘘を吐いた。
その途端、翼宿の顔が歪んで。
「泣きたいんやったら泣けばえぇやろ!?」
怒鳴りつけられた。
何故そんなことを言われなければならないのか。
怒鳴りたいのはこちらの方だ。
それなのに、この顔は曖昧に微笑んだだけ。
…嫌になる。
また、嘘か。





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