お題

□本音。建前
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「…はよ治してもらった方がえぇんとちゃうか?」
急に響いた声に井宿は思わず肩を震わせた。
柄にもなく狼狽する。
見られたくなかった、こんな自分は。
「…先に行くよう言ったろう?」
「お前がなかなか来ぉへんから、皆心配しとんのや」
それでわざわざ呼びに来たのか。
時間の経過も、他人の気配も判らなかった自分に嫌気が差す。
「…すぐ、戻るのだ」
「大丈夫なんか?」
背を向けたままだったから、変に思われたんだろうか。
見せたくないのは、体ではないのに。
「大丈夫なのだ。」
だから、これ以上踏み込むな。
そう言えたらどれだけいいか。
自己嫌悪。
心では距離をおいても、物質的な距離も壁も自分は造れない。




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