お題
□綺麗な心
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井宿の髪から水がはらはらと滴り落ちる様子をまともに見てしまった翼宿は、僅かに頬を染めると目をそらした。
｢だ?翼宿、どーかしたのだ?｣
井宿の鈍さは分かってはいたが、あまりに無防備だと困る。
｢別に、何もあらへん。｣
実際のところはありまくりだが、そんなこと言ってしまえば横にはいられないし。
色々と複雑な気持ちを押さえ込み、曖昧な笑みを作った。
そんな翼宿を見て、井宿は不安そうな表情になる。
井宿は、翼宿が井宿に抱いている想いを知らないのだ。
しかし、翼宿だって井宿の翼宿への想いを知らないのだから、それはおあいこだろう。
二人して黙ったままぎこちなく"いつも"を演じる。
そんな二人を、柳宿は静かに見つめながら呆れたように呟いた。
｢二人とも、鈍すぎよ…あれじゃいつまでたっても。ねぇ…｣
｢全くです。見ていてもどかしいですよ｣
二人の気持ちに気付いている張宿と、翼宿の相談相手になってやっている柳宿は、あまりのすれちがいに大きな溜め息をついた。
二人の想いが通じ合うのは、いつのことだろう?
END
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