お題
□綺麗な心
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まるで、太陽のような橙色の髪。
風に吹かれて宙を舞うその色は、心の美しさを示しているようで。
屈託なく笑う、そんな仕草に惹かれていた。
いつからだろう、そんな風に感じるようになったのは?
澄んだ水面に釣糸を垂らしながら、井宿は珍しくぼぅっとしていた。
向こう岸にあったはずの橙色が消え、背後へと移動したことにも気付かずに、ただ空を見つめていた。
「でやっ」
急に耳元で声が聞こえたかと思うと、世界がぐるりと反転する。
「っだ!?」
バシャ、と水音が上がり井宿は見事に湖へとダイブ。
先ほどまで井宿が座っていた場所に、今は橙色の髪をした青年が立っていた。
楽しそうに腹を抱えて笑う姿を見ると、怒るに怒れなくなり、井宿は困ったような笑みをいつもの面に浮かべるとゆっくり立ち上がる。
「翼宿、酷いのだー…びしょびしょなのだ。」
「ボーッとしとう方が悪いんや!」
翼宿はそう言うと、未だ水の中に居る井宿を岸辺へと引きずりあげた。
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