お題

□慈愛-ギゼン-
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可愛くて可愛くて堪らない。
鎖で繋いで、私だけのものにしてしまおうか。

慈愛-ギゼン-


いつからだろうか。
誰にも渡したくない、なんて思うようなったのは。

「井宿ー」

何時も側においておかないと不安で仕方がない。
日に何度も名を呼んでは探し回る。
次第に相手も慣れてきたのか、出掛けるときには前以て教えてくれるようになった。

「翼宿、オイラは子どもではないのだから…」

困ったように諭されるが、心配なんだからしょうがない。
傷付いてほしくないから、いつでも守れるよう側に居たい。
彼が傷付いたとき、恐らく自分は壊れてしまうから。
貴方に愛されるためならば、どんな嘘でも吐いて見せるけれど、傷付く貴方を前に平静は装えない。

「…まったく、幼子ではないのだから…」

語調を僅かに荒げて、叱っているつもりなのだろうか。
そんなことをしたって、全く意味はないのに。
例えどれだけ厭われても離れたりはしないし、放したりしない。
守ると決めたのだから。
貴方のためではなく、俺のために。
貴方は俺の鎮静剤だから、無くなっては困る。
ずっと、側に居てくれなければ。
貴方まで死んでしまったら、俺は正気ではいられないだろうから。
だから、傷付かぬよう傷付けぬよう、守るから。

側に居てください。





      END*




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