お題

□微笑-ウレイ-
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笑っているのは、苦しいからだ。
泣かないのは、痛いからだ。

微笑-ウレイ-

いつも曖昧な微笑みを湛えるようにした。
絶やさぬ笑顔は無表情であることと大差ないと理解していても、消すことなど出来なかった。
ただ人形のように笑み続け、自分で自分が恐ろしくてならない。

あぁ、悲しい。

唇から漏れる微かな嘆きは闇へ溶け、誰の目にも触れはしない。
届かない声を幾度もあげて、気付かれぬことに安堵する。
側に居ても、離れていても、それは決して変わりはしない。
己は、笑んでいる。
己は、病んでいる。
悲鳴の代わりに漏れるのは笑みだ。
何が悲しかったのか最早分からない。
必死に目の前の人にすがりつこうと、背を向ける。

あぁ、哀しい。

目の前の貴方は笑んでいるのに泣いているのだ。
それはそれは深い慟哭。
オレにはそれは救えない。
「井宿、」
名を呼んでただ抱き締めることしか出来ない。
ゆっくりと壊れてゆくのを眺めることしか出来ない。
「好きや」
あぁ、なんて陳腐な台詞だろうか。
これでは心に響きなどしない。
だからオレは貴方の代わりに笑うのだ。
少しでも貴方が光を浴びられるよう笑うのだ。

あぁ、哀しい。
あぁ、悲しい。

何がこんなに悲しいのだろう。
もうわからない。
ただ。
ただ、お互いがお互いを愛してる。
それは確か。
それだけが確か。

あぁ、愛しい。




     END*




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