お題

□隠せぬ想い
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「翼宿さんって…」

夕食も終り、それぞれが自室へと散っていった後、思い出したように張宿が呟いた。

「あん?なんや、張宿?」

その場に居た人…とは言ってもこの二人以外の人は柳宿と軫宿だけだが、その視線は張宿へと集まった。

「あ、別にたいしたことではないんですけど…」

その視線にたじろいだかのように目を泳がせ、困った顔をする。
そんな張宿を見て、柳宿たちは不思議そうな顔をしたが、翼宿は余計に気になりだしたようで張宿を急かした。

「なんやねん、気になるやんけ。怒らんから言うてみい。」
「え…あ、じゃあ…あの、」

おずおずと話だした張宿の話に三人は耳を傾ける。
が、その"話"は一言で終わった。

「翼宿さんって…井宿さんのこと好きなんですね。」

"好きなんですよね?"でも"好きなんじゃないですか?"でもなく、断定。

「なっ!?」
「あら〜張宿って鋭いのねー…」

絶句した翼宿に代わって柳宿が肯定する。

「…知らなかった…」

ぼそ、と呟いた軫宿の言葉に翼宿はようやく気を取り戻した。

「ちゃう!いや、ちゃうくないねんけど!ちゅーか、なんで知ってんねんー!?」

動揺しているのが丸分かりで、見ている方が気の毒になってくる。

「何でって…見てたら分かりますよ」
「そうよぉ、アンタ分かり易すぎるもの」

さっくりと言い切られ肩を落とした翼宿を慰めるように軫宿が手を添える。

「何、アンタ隠してるつもりだったの?」

笑いながらのその発言に、翼宿は更に凹んだ。
彼は彼なりに頑張って、隠していたつもりだったのだ。
ただ、その想いが大きすぎただけ。
溢れんばかりの想いは、彼一人の胸に留めおくには大きすぎたのだ。
だから、いつか必ず伝えよう。
溢れる想いを。
必ず、君に。



     END



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