駄目文

□世界は広い
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"一生のお願い"

困ったなぁ•••。
あれからどのくらい経ったのか、数えるのも少し億劫な程には経っているだろう。
なのに•••まだ、彼の事を思い出せる。

"一生のお願い"

この言葉を思い出す度に、知らないうちに笑っているみたいで。
すれ違う人達に変に思われた。

「会いたいなぁ。そう思うのは、僕だけ?」

空に向かって独り言。
癖になってしまった。
ずっとずっと心の中で思い続けて、溢れそうになったら空に向かって声に出す。

「テッドも•••僕に会いたいって•••思ってくれてればいいのに」
色んな場所を歩いて、見て、時には戦って。
「ねぇ、テッド。本当に世界は広いね」
こんなに歩いてもテッドと会う事はなかった。
「君は今どこを歩いているの」
ぶっきらぼうだけれど、優しくて
無愛想だけれど、実はそうでもない
2人きりの時は、たまに笑顔を見せてくれて
僕を見つめる瞳には、時々溶けてしまうんじゃという程熱をこめる

「本当に困ったなぁ•••」
いつまでも色褪せずに思い出せる。
きっと何百年経っても思い出せるんだろう。
「こんなに•••君でいっぱいだなんて•••ありえない」
ぎゅっと胸元を、溢れてくるのを抑えるように掴む。
無意味だとわかっているけれど、何かしてないと溢れてしまいそうで。
そして左手までもが疼いてきた。
「テッドの事•••思い出し過ぎたのかな•••」
なんて的外れだとはわかっているけれど。
どうして疼くのか全くわからないのだ。
「•••テッドの•••ばか。薄情者。魚好きじゃないって言ってたくせになんでマグロは好きなんだよ。ばか。ひとでなし。ばか。ばか。ばか。•••••••••だいすき」
ありったけの悪口と、一つの本当。
人目につかない所に座り込んで、頬に左手をあて目を閉じる。
目を閉じて真っ先に浮かぶのがやっぱりテッドで。
それに腹が立って、目を閉じたまま腕を空に向かって伸ばしたら何かに当たった。
慌てて目を開けて見たものは•••




ずっとずっと思い描いていた人だった。


END

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