あれは、寒い冬のある日のことだった。
俺の家に続く、最後の十字路で彼女を見つけた。
誰かを待っている…一瞬で分かった。
『俺』を待っていると、分かり切ってはいるけど、あえてそれは気付かないふり。




あれ?
こんなところでぼーっとして、どうした?

その様子だと、買い物…って訳でもなさそうだ、な。

ん?
………って、君、手冷たいし、唇も紫に変色してきてるって。

いつからここに居たんだよ、まったく君は目が離せなくて困るよホント。



一通りの偶然現れた『オレ』を演じて、君は嬉しそうに笑う。
冷えた手は、俺の手から流れる熱で徐々に温かくなり、唇の代わりに頬が紅く染まった。

そんな可愛い顔すると手が離せなくなる。
寒さの所為なのか、オレの所為なのか分からないけど、潤んだ瞳も震える唇も俺が奪いたくて堪らなくなる。


ねえ、そんなに君は俺に逢いたかったの?


ふと溢した言葉に、肯定の言葉を恥ずかしそうに言う。


ねぇ、その顔…俺の前以外で見せないでよね。
例えオレにでもなんか悔しいから。


意味が分からないと言うようにぽかんとした彼女。
だけど、次の瞬間聞こえた一言に俺は一気に熱くなった。


私はあなたしか見えないからその心配はないよ――



もう、参っちゃうな。
君は俺を喜ばせて何がしたいんだか。

俺は彼女の頬にキスを一つ贈ると、満面の笑みで俺にもキスをくれた。

寒さなんて忘れるくらい、君の温もりを感じた…そんな日だった。







(遊佐さんでした。表面上のオレと素顔の俺。君の前だとオレの仮面はすぐに外れるぜ的な文章です←)







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