戴宗×林冲
□クマさんとゆかいな仲間対
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公孫勝が梁山泊で見せた技。それを見た瞬間、戴宗は使えると思った。
「おい、モコモコ」
「なんだい?戴宗」
梁山泊攻略もようやく落ち着いた頃、戴宗はそれを実行するために公孫勝に声を掛けた。
「相談があんだけど……」
にやりと質の悪い笑みが浮かぶ口許。何か悪巧みを企んでいるようなその顔に、公孫勝は不思議そうな顔をしている。
ちょいちょいと手招きをして屈ませたその耳元に、計画を囁き掛けると公孫勝は僅かに瞠目した。
「え?でも、そんなことしたら……」
「大丈夫だって。じゃぁ、頼んだぜ」
躊躇を見せる公孫勝の肩をバンバンと叩き、戴宗は準備をするべくその場を立ち去る。そして流星の名の如く、すぐにその場に戻ってきた。憐れな生贄を連れて……。
「一体何の用ですか!?」
「まぁまぁ」
怒り心頭なのは、豹子頭林冲だ。その秀麗な容貌に青筋を立てていることにも全く構わず、戴宗はずるずると引き摺るようにして連れてきた。
「じゃ、モコモコ。よろしく頼むぜ」
もう今更断ることなど出来ないと思ったのか。大体にして戴宗に声を掛けられた瞬間から、逃げ出すことはできないのだ。
公孫勝は諦めたように嘆息を一つ吐いて、指で輪を作った。その輪に息を吹き込み、空気を風船のように練成する。それを目の前で工作をするようにして、ある形に整えた。
「クマ」
それを手に翳して見せると、途端に林冲はその黒曜石を嵌めこんだような瞳を輝かせた。師匠を可愛いと言っていたぐらいなのだから、これも守備範囲だったのだろう。
しかしこのクマは見た目と反し、全く可愛いものではなかった。
公孫勝に息を吹き込まれたクマは、その姿を巨大化させる。そして地響きを立てて、クマは目の前に降り立った。
「なっ……、な……っ!?」
信じられぬ光景に、林冲は大きく目を見開く。梁山泊で公孫勝がこの技を見せた時には林冲は地に伏していたから、実際目にするのは初めてのはずだ。
そんな林冲の前で公孫勝は更にクマに命令を与える。その瞬間、林冲はがぷりとクマに食われた。戴宗と共に……。
「守熊柵!」
そしてクマは小さく縮み、完全に二人はその中に封印されたのだ。
「いやぁ、お見事お見事。ありがとよ!モコモコ」
「いいかい?30分しか持たないよ」
「30分ありゃぁ、とりあえずは充分だ」
突然のことに声も出さない林冲を他所に、二人は勝手に会話を進めていく。そして仕事が終わったとばかりに、公孫勝はその場を立ち去った。
「えっ……?ちょ……っ!待って下さい!!」
その背中にようやく我に返った林冲は慌てて声を掛けたが、すでに時遅しだ。その場にはシャボン玉のクマの腹に収まった、戴宗と林冲だけが取り残された。
「い、一体どういうつもりですか!?」
当然怒りは首謀者であろう戴宗に向けられる。しかし戴宗はどこ吹く風だ。それどころか、まんまと策略通りに事が運んで至極満足だった。
「どういうつもり?これはどんな攻撃にも絶対に破れない。そんなところに二人で閉じ込められたら……」
攻撃も何も、現在戦闘状態ではなかったために林冲は丸腰だ。
戴宗は林冲の反応を愉しむように、一旦そこで言葉を切った。林冲はすぐにその言葉の意味を理解したのだろう。呼吸することさえ忘れたように、戴宗を見ている。
「ヤるこたぁ、一つだろ?」
それに止めを刺してやるように片頬を引き上げて言ってやると、林冲の顔は蒼白に変化して頬をひくりと引き攣らせた。
戴宗はゆっくりと、極上の躯に手を伸ばす。
「やっ!やめェェェェっ!!」
新しく替天行道のアジトとなった梁山泊。澄んだ蒼穹の下、その梁山泊の一角で悲愴な悲鳴が上がった。
2009.10.7
―――― 青○……?(笑)
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