「孝馬」


学校の校門を抜けると1つ、クラクションが
耳に入り顔を上げた。見覚えのある車に運転手が1人。
近付いてみると窓が開いて運転手がこちらを覗く。


「嘉、どうしたの?珍しく車なんか出しちゃって」
「買い物。時間、終わり頃かなって思って寄った。帰るだろ?」
「うん。ありがとう」


いつもは電車通学なのでラッキーと思いがーどを跨いで助手席のドアに手を掛けると運転席から嘉が降りてこちらに回ってきた。


「…嘉?」


しばらく彼の行動を見ていると、嘉は自分より先に助手席のドアを開けて座席に座った。


「お前運転」


バタン、とドアがしまって現状を把握する。


「…はいはい」


運転席側に回り、カバンを後部座席に投げると彼が買ってきた袋が目に入った。


「何買ったの?」
「食べ物とか。あ、歯ブラシの予備買っといたよ」
「あ、忘れてた。ありがと」


そんな会話をしながらシートベルトをして嘉から鍵を受け取るとそれを挿してエンジンをかける。


「でも言ってくれれば付き合ったのに…」
「疲れてるだろ?いいよ」
「嘉となら関係ないよ」
「…そ」


後方を確認して道に出ると、夕暮れ時の暖かな日差しがフロントガラスに反射した。


「…眠いの?」
「今日早かったからちょっとだけ…」


あと、と嘉は目を閉じる。


「お前の運転、優しいから…」
「それ、乗る度に言うね」


その言葉に口元を緩ませながらハンドルを切ってゆっくりと家路を走る。


「まぁ、嘉乗っけてる時は無茶はしないよ」
「乗ってない時もするなよ」
「気をつける」


そう言うと嘉は「ん」と答えながら夢の中に落ちていった。





ゆめどらいぶ





[20131204]


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