宝
□文化祭マジック
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――――文化祭当日
朝早くから、屋台準備やら装飾準備やらで生徒のはずんだ声が聞こえてくる。
そして僕はというと、応接室の窓から外をながめていた。
―――コンコン
「…………誰?」
「「し、失礼しますっ!」!」
「それ………」
ビクビクしながらドアをあけ、入ってきた女子二人の格好は…………
「メイド服?」
「は、はいっ!すみません」
「じ、実は笹川君に頼まれて服を持ってきたんです……」
やっぱり了平のクラスの衣裳か。
「了平は?」
「今、クラスの大道具類を運んでもらっていて手が離せないんです……」
「それで、雲雀さんは着方わからないだろうから手伝ってやってくれって……」
二人は申し訳なさそうに言うと衣裳の入ってる紙袋を差し出してきた。
自分が着ろって言いだしたくせに人に頼むなんて……了平のやつ
「……着るのやめた」
「「えっ!?」」
「了平に言っといて。着てほしかったら自分でこいって」
「そ、そんな」
二人は紙袋をもったままあわてていたけど、顔を見合わせるとおずおずと話しだした。
「あの……笹川くん、すごく喜んでました……雲雀さんが衣裳きてくれるって」
「これ……私たちが手直ししたんです。雲雀さんに合うように……だから私たちからも、着てもらいたい……です」
「……………」
まさか女子にまで着てもらいたいなんて言われるとは思わなかった……。
了平、どれだけ大騒ぎしたんだろう。
「………似合わなかったら、噛み殺すよ」
「はっ、はい!」
「ありがとうございます!」
二人はいそいそと服を取り出した。確かに二人の着てるのよりヒラヒラが少ないし、スカートも少し長い………でも、メイド服であるのは間違いない。
「…………はぁ」
僕は大きくため息をついてから、学ランをぬいだ――――。