FF7 SHORT DREAM SIDE・R

□鳴らない電話の向こう側
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鍋にお湯を沸かして塩を入れ、まずは自分の分を茹でる。
生憎とカノンはアルデンテは好きじゃない。

「…固いか柔らかいかハッキリしろ!」だそうだ(苦笑)。

…そーいやサラダ好きな癖にナッツ類やフレークの入ったの、食わないよな。
好きだって言ってた中華も、カシューナッツと鶏肉の炒め物は先にナッツだけ食っちまうし…。



妙なトコ、子供っぽいよなカノンって、と。



俺は普通でいいからアルデンテ、カノンのは芯のない茹で過ぎくらいのを。



「〜♪」



エビは背腸取って片栗粉と塩で揉み洗いして、茹でて一口大に切る。
フルーツトマトも半分にカットして…オリーブオイルと塩コショウ、隠し味はほんの少しの蕎麦つゆ!
後はバジルをちょいと乗せれば出来上がり。



「…ぁ?もう8時かよ、と。―――やべ、風呂!」



慌ててバスルームに行けば、案の定お湯はザアザアと溢れていた。



「…あーりゃりゃ、と…。」



まぁ、溢れた所で下に漏れるワケもなく、1滴残らず排水口に行くンだけども。



(カノンいなくて良かった―――…見つかってたら怒られてたぞ、と。)



お湯を止めてダイニングに戻れば、ウサギみたいな耳した癖にネズミだと言い張るソイツが8時47分を指していた。



(…遅過ぎねぇか、と?)



デスクワーク長引いて残業…なワケねぇか。
その日の報告書はその日に上げるカノンは滅多に残業なンてしない。



「…“帰り、は…何時、頃だ?”…と…。」



メールを送信して携帯を閉じる。
余り遅くなるようなら迎えに行ってやった方がいいだろう、カノンの通勤は徒歩だから。
(車と大型バイクとついでにヘリと船舶免許も持ってンのに…なンで歩きなンだろーなぁ、と?)










コチコチと刻む秒針が煩い。



「……………。」



あー…眉間に皺寄せ過ぎて痛ぇぞ、と。

時間は既に10時過ぎ、幾らなンでも遅過ぎンだろ。

何度電話しても留守電に繋がるのは、午前中と変わらない。
けど…デスクワーク中ならメールの返信くらいあってもいいだろ?



「…カノン…。」



あぁ…何してンだ、あいつ。

何かあったンじゃ―――?!



「…ただいま。」

「ぅえっ!?」

「…何だその“ぅえっ!?”って。」



呆れたように一瞥されて溜め息を吐かれてしまった。



「―――や、オマエ…今まで何やってたンだ、と?」

「…仕事に決まってんだろ。」

「しご…っ?!」



側に近付いた俺は、嗅ぎ慣れた匂いに眉をしかめた。



この匂い―――…。



「オマエ…今日はルードと組んだか、と?」

「…あぁ。」

「―――本当に仕事だったのか、と?」

「…は?」

「こンな時間までルードと2人きりで仕事?」

「…何が言いたいんだよ。」

「オマエの体中からルードの匂いしてンだけど、と?」



ルードは微かに香る程度しか香水を付けないから、抱き合いでもしなきゃこンなに匂い移んねぇだろ、と。



「…一緒に居たんだから当たり前だろ。…何変な誤解してやがる。」



一緒いただけなのか、一緒にいて何かしてたのかが問題なンだっつーの!


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