HIDE YOUR FACE
□HONEY BLADE
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なんだか、毎日がつまらない。
念願叶って手に入れたスリムなボディ、エレキ禁止だった高校時代を経てやっと組めたバンド。
やりたい事やって満たされてる筈の生活なのに、『何か』が足りない。
その『何か』がなんなのかも、解らないけれど。
遊び仲間なら、沢山いる。
ちょっとフラフラ歩いてりゃ、女は幾らでも寄って来る。
ココロもカラダも満ち足りてる筈なのに、どこかで違うとそれを否定する自分がいて、イライラと溜め息ばかりが洩れる日々。
…つまんね。
俺が子供の頃に望んでいた『ミライ』ってヤツは、こんなにもモノクロで味気ないモノだったのか?
大人って、こんなに退屈なの?
それでも周りには愛想振り撒いて、楽しいフリして一時的な快楽に浸っちゃったりなんかして。
何やってんの、俺。
こんなんじゃなかった筈。
思い描いてた人生の設計図とやらは、どこで狂っちまったんだか。
あんなに綿密に立てた筈じゃん。
『将来の夢を作文にしましょう』
―――って。
将来なんて漠然と、そしてぼんやりとした輪郭でしか見えない小学生に、先生は400字詰め原稿用紙を3枚も押し付けてくれた。
『医者になって、見放された人たちを助けてあげたいです。』
あぁ、3枚なんて必要ないじゃん。
―――なんて、下らない事を考えてたからかも知れない。
下腹部に、結構な衝撃。
目の前に、ランドセル背負って尻餅突いてる女の子。
友だちのウチ行った帰り、最寄りの駅まで1kmちょっとの住宅街。
敷地と道路を隔てるコンクリート製のブロックで出来た灰色の壁は、俺の顎くらいの高さで連なる。
「…い、た…。」
「―――ッ、悪ぃ!大丈夫?!」
角っこでの出会い頭。
何が起きたのか、一瞬、理解できなかった。
小さな声にハッとして、取り敢えず謝っとく。
至近距離でしゃがんだ俺を視界に捉えた少女は、大きく目を見開いた。
…うん。
自覚はあるんだ、自覚は。
どうせ子供がフリーズする格好してるさ!!!←
だってバンドやってんだもんっ。
髪が長くて派手なのは仕方ないっしょ!
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