婆裟羅 短篇 夢
□彼氏の事情、彼女の事情
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「…佐助。」
「―――っ、ぅえ…?!」
何よ、その声。
余程集中していたのか、わたしに呼ばれた佐助の返事は裏返っていた。
「10本射って真ん中に当たった数の多い方にアイス、奢りね?」
なんだか悔しくて、そう言ってやれば。
「…へっ?ん、あぁ…いいよ。」
ニッコリと笑って答えられてしまった。
…何よ、その余裕は。
わたしなんて相手にならない、とでも思ってるんでしょ。
わたしだって弓道部じゃ上位者なんだからね、見てらっしゃい!
でも…
知ってる、んだから…。
「ん〜っ、集中力切れてきちゃった…。」
なんて言いながら、途端に佐助が的を外し始める。
あからさまに外すと悪いと思うのか、わざとスレスレの際どい所を狙う。
『アイスくらい俺様が奢ってアゲるよ。』
佐助の無言の優しさ。
ちゃんと、知ってるよ?
ちゃんと、届いてるよ?
でも、その優しさは………。
佐助とは家がお隣同士の幼馴染み。
更に親同士もも幼馴染みで小さい頃からずっと一緒。