HIDE YOUR FACE

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「野郎…。」



音もなくぐるぐる回る秒針を睨みながら俺は唸る。

今日は俺の誕生日。
この歳にもなって流石にパーティーではしゃぐワケでも、もはや祝ってもらっても嬉しいんだか悲しいんだか解らなくなってきてるけどもだ。



「普通、彼女なら今夜くらいいるだろ!?」



呑も…祝ってくれるってメンバーや友だちの誘い断って、久々に、ほんっとーに何年振りかにアイツと2人っきりで過ごそうとしてたのに、肝心の恋人がいない。
起きたらもういなかった。

さっきっからメールも電話もしてんのに出やがらねぇし。



「……………(-"-)。」



忘れてる、とかじゃねぇよな?
だってみんな覚えててくれてんだぜ?
付き合ってる女が忘れるワケ………。



(ありえる…アイツならありえる!!orz)



そんじょそこらの可愛くて、健気で、何かにつけて記念日だってサプライズする女と違う。
付き合った日も、初めてキスした日さえ忘れるような、もっと言えばそんなんどーでもいいって女だ。
彼氏の誕生日なんか忘れててもおかしくない。



「呑み行きゃよかった…。」



少なくとも、こんな日にこんな寂しい思いしなくて済んだ。



「ハァ…。」



今更みんなに集合かけるワケにもいかないよなぁ…たぶん、なんか予定入れちゃってるだろうし。

仕方なく冷蔵庫を開けて漁る。
冷えたビールとなんか…む、このカニカマ食っていいのかな?



「誕生日にカニカマつまみにビールかよ…。」



去年は豪華だった。
よっちゃんがホテルのレストラン貸し切っちゃって、XやらスプレビやらLUNA SEAやらGLAYやら…とにかく沢山いて。



「………むなし。」



ビールもカニカマも随分と味気ない。
半分残った缶ビール、ひとくちかじったカニカマをそのまんまテーブルに置いてソファーに突っ伏した。
つけっ放しのテレビから流れる笑い声が嫌に耳につく。

馬鹿みたいに、よくそんな笑えるな…。

眉間に皺が寄るのが解る。
俺、相当イライラしてる。



「………かのんのばーか。」



肝心な時にいてくれないなんて。

ぼんやりとテレビを眺めてたら、いつのまにか眠ってた。




















「ねー、起きてよーぅ。腹減ったぁ!」

「………あ、やべ、よだれ。」

「汚っ、ソファー洗えないんだからやめてよ!」

「酷ぇ女…って、なんだお前その格好?」



いつ帰って来たのか、ゆっさゆさと体を動かされて起きた。
なんかくちから出た気がして拭ったら、容赦ないツッコミが被弾。
寝起きの俺に辛辣なミサイル撃ち込む女なんか1人しかいねぇ。



「つか生臭ぇ!!」

「…秀人さんもじゅーぶん酷いですが?」

「いやいやいや!!マジなんなの?!なんか昔の市場の魚売ってるとこみてぇな匂いすんですけど!!」



今でも海外行くとあるけど。
氷もなんも敷かないで直接なんかの板に乗っけて、炎天下にテント建てただけで売ってる市場みたいな匂いすんですけど!?


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