婆裟羅 短篇 夢
□ちょこれぃと☆ぱにっく!
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それは、ちょっと海の向こうに行ってたという西海の鬼が、わざわざ甲斐にまでお土産を届けに来てくれた事から始まった。
『…ばれん、たい…ん…?』
『そ。西洋の国じゃ、女が男に“ちょこれぃと”っつー甘味渡して愛の告白するらしいぞ?』
武田が誇る戦姫―――武田軍唯一の女武将かのんちゃんが、鬼の旦那とお茶しながらコテンと首を傾げた。
『そ、その…ちょこれぃと、なる甘味はどのような物に御座ろうか?!』
あ、流石旦那。
喰い付くトコそこなんだ。
『ん〜…黒くて固くて、でも直ぐ溶けて甘くて…香りもいいな。』
『元親殿は食した事があるで御座るか?!』
『あぁ…中々旨いモンだぜ?』
じゅるり。
旦那が涎を飲み込む。
甘味大好きな旦那だ、隣国や遠国、果ては海を越えた国の甘味にまで興味深々。
『…ちょ…こ、れぃ…と…。』
『うむ、ちょこれぃとぞ!かのん、我にそのちょこれぃとなる物と貴様の愛を献上せよっ。』
『ちょっ…毛利の旦那、土足土足!!』
スパン!と襖が外れそうな勢いで現れたのは、ウチの旦那に負けず劣らず甘味大好きオク…ゲフンゲフン!中国の総大将・毛利元就。
『大体、どさくさに紛れて何言ってんの?!かのんちゃんの愛は爪の先程も献上させないよ!!』
『いーじゃんいーじゃん!命短し人よ恋せよ、ってね。かのん、俺と夢吉にもそのちょこれぃとってヤツくれるよな?』
『…えーと。』
『キィ?』
『動物使って釣ろうなんて、そうはさせないよ!!』
大体、どっから湧いて出たのさ!
前田の風来坊の事だから、またまつさんに怒られて甲斐に逃げ込んで来たんだろうけど。
『Hey.Honey!奥州筆頭・伊達政宗がHoneyのChocolateを頂きに来たぜ!!』
『はぁ〜…ウザいのが来た…来なくていいのに。』
『………なんか言ったか、猿?!』
『聞こえなかったの?あんな大きな声で言ったのに?あんた、もう引退した方がいいよ、竜の旦那。』
『てめっ…!!』
『佐助…。』
『なぁに、かのんちゃん?』
『その、ちょこれぃと、なる物はこの国でも作れる物なのか?』
『……………………………………………………さぁ?』
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