婆裟羅 短篇 夢
□カミサマの悪戯
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「―――かのん、ちゃん…?」
不意に名前を呼ばれて、疲れた顔のまま振り返った。
振り返ってから、振り返らなきゃ良かったと後悔。
だって今、化粧崩れてる。
もう2週間休みなしで残業続き、目は虚ろ。
「…さす、け…く…ん…?」
見間違える筈がない。
特徴的なオレンジ色の髪。
金色にも見える蜂蜜色の瞳。
…わたしが、むかし、あいした、ひと。
突然の再会に、涙が零れそうだった。
高校の時、佐助と付き合ってた。
キスもセックスも知らなかったわたしが、キスもセックスも覚えたのは佐助で。
とどのつまり、わたしの『ハジメテ』は全て佐助に持ってかれた。
『佐助はやめろ。あいつと付き合ったら泣き見んのは、かのんだ。』
幼馴染みの元親が珍しくわたしに怖い顔をして忠告したのは、当時佐助が女遊びが激しいと有名だったから。
長くて2週間くらい、短い時はその日の内に。
付き合っては別れての繰り返しな佐助に、恋に恋してるようなわたしは任せられないと元親は必死に止めたけれど。
大方の周囲の予想に反して、わたしと佐助は高校卒業までの2年とちょっとを恋人として過ごした。
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