婆裟羅 短篇 夢
□SEVENTH HEAVEN
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…参った。
つ…と頬を伝う生暖かい汗が顎の先端から音も無く地面に落ちた瞬間、ぱつり、と弾けたのがヤケに大きく聞こえた。
…あーぁ、参ったねホント。
こんな事になる、なんて。
精一杯の作り笑いは、きっと酷く歪んでいたに違いない。
…嗚呼…と後悔の溜め息を吐けば、その拍子に体が揺れてぢくぢくと脇腹が痛んだ。
腹を押さえた指の隙間から零れるねっとりとした体液が熱くて熱くて、目眩を起こしながらも己の迂闊さを今更ながらに呪った。
「…かのん……っ。」
本当は『かのん様』もしくは『櫻井様』と呼ばなきゃならない、俺様とかのんちゃんとの間の身分の違いで。
―――何で、こんな事になっちゃったんだろ…?
問い掛けた所で返ってはこない答えを、それでも聞きたくて俺様は目の前で刀を構えた女(ヒト)を見つめた。
―――この世で、最も愛しい女を。
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